【月報・青学陸上部】3連覇ならず。出雲の敗北で何が起きていたのか (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Kyodo News

「昨年は4年生がしっかりと引っ張ってくれて、勝つことができた。それが僕の中では強烈な印象として残っていました。それが今回、最後の"絞り出し"につながったのかなと思います」

 トップを走る東海大の松尾淳之介を残り600m付近でとらえた。一気に抜き去ると今度は東洋大の山本修二とのトップ争いになった。そこで昨年の借りを返すべく、最後の絞り出しを見せたのだ。

 下田がトップで4区の小野田勇次に襷を渡した。2位の東洋大とはわずかに3秒差、3位の東海大との差は5秒だった。

 下田でトップに立つという原監督の戦略は、この時点で達成された。しかし、1区の遅れを取り戻し、他大学を突き放すほどにはならなかった。

「ここで最低10秒差は東海さんにつけたかったなぁ」

 監督室でモニターを見つめる原監督の表情が少し歪んだ。後半の面子を見ると、東海大には4区に鬼塚翔太、アンカーには關がいる。前半勝負に賭けた青学だが思ったよりもリードできず、このタイム差では後半、厳しい戦いになることが想像できていたのだ。

 その後は原監督の危惧した通りにレースが展開していった。4区の小野田は最終的に鬼塚に14秒差をつけられ、5区のルーキー神林は37秒とさらに差を広げられた。

 6区のアンカー橋詰は、「先行される状態が予想されるので、最初から突っ込んで後半粘るレース展開にできればいい」と、最初の2kmで15秒差まで縮める驚異の走りを見せた。しかし、これは完全なオーバーペースで、しかも暑さにもやられ、身体中の汗腺から玉のような汗が吹き出していた。

 關という難敵を考えれば、とにかく地味に喰らいついていくべきだったが、逆にドンドン離され、ついには視界からも消えてしまった。

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