東京五輪でメダル独占するかも...。ロンドンで日本の競歩が見せた夢 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Fujita Takao/PHOTO KISHIMOTO

 今大会で最も早い朝7時46分にスタートしたレースは、3km過ぎから予想通りに世界記録を持つヨハン・ディニ(フランス)が3時間30分台中盤のペースで飛び出した。5km手前でトイレに行くハプニングもあったが、すぐに単独トップの態勢築く。

 このディニの動きに、日本勢を含むほかの選手はまったく対応しなかった。気温は14度とはいえ、これから陽差しが強くなるなかでディニの驚異的なペースについていけば、後半潰れる可能性が高い。そのうえディニは、昨年のリオ五輪で同じように飛び出しながらも、後半は大失速して8位に落ちるなど、途中棄権や失格が多い不安定な選手だからだ。

 しかし、今大会のディニは本物だった。中盤もペースを落とすことなく、後半はさらにペースを上げた。その結果、3時間33分12秒の大会記録を出し、世界選手権の初タイトルを獲得した。

 一方の追走集団は、全員がリオ五輪銅メダリストの荒井の動きをマークする展開になる。集団は36kmを過ぎてからは、荒井が先頭に立って引っ張り、それまでの2km8分55秒ペースを8分46秒にまで引き上げた。その仕掛けについてこられたのは小林だけ。40kmでは、ふたりが4位のエバン・ダンフィー(カナダ)に27秒差をつけてダブル表彰台を確実にした。

「荒井さんが他の選手を振り落とした時に、ついていけたのが一番よかったと思う。中盤に警告カードが出て、焦って硬くなった時も荒井さんに声をかけてもらって、何とか冷静さを保つことができた。ふたりになってからも何度も声をかけてくれて、『ふたりでメダルを獲るぞ』とペースを作ってくれたので、何とかついていくことができた」と小林はレースを振り返る。

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