世界陸上日本代表で最速タイム、井上大仁が東京マラソンで試したこと (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO

 その後はゲブレゲルギシュと並走しながら粘り、失速した設楽を38km付近で抜いて日本人トップにはなったものの、「我慢できたこと以外は弱さを感じる結果でしかなかった」と井上は反省する。

「タイムは2時間08分22秒でひとまず形にはなりましたが、38kmで設楽さんを離すためにスパートをかけた後は足が動かなくなって、勝負できる力が残っていませんでした。最後の2kmでゲブレゲルギシュに置いていかれたのも悔しいです。川内さんや中本さんならそこでギアを変えていくし、最後の最後に追い切れる力がないと世界選手権では勝負にならない。そこが7分台に届かなかった原因だと思っています」

 理想としては、かつて2時間6分台を記録した藤田敦史や犬伏孝行、高岡寿成のように5km15分前後で最後まで押していくレースをしたかったという。

「そういうレースができるようになった上で、最初の10kmが29分前半になっても抑えずに1km3分弱のペースで走れる力を上積みしたいです。設楽さんが東京でやったようなレースをしても最後までついていける力があれば、五輪や世界選手権のように前半は遅いペースで後半に一気に上がるレースにも対応できるんじゃないかと。

 欲張りすぎだと言われるかもしれないですけど、記録や順位はもっと伸ばしたかったですね。東京では自分の前に7人も選手がいて、1位と約4分半も離されてしまった。黒木純監督は『持っている力は出し切れた』と評価してくれましたし、世界選手権も現状の力でうまく組み立てて戦うしかありませんが、さらに上の次元で勝負するためにはもっと力をつけることが不可欠だと痛感しました」

2 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る