勝つために遅く走る日本のマラソン
新戦術「ネガティブスプリット」とは

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kanami Yoshimura/PHOTO KISHIMOTO

 レース展開について重友は、「(12kmあたりから)離された時は体が重いという感覚もありましたが、自分のタイムを見たらそんなに遅くなかったので、周りが上がったんだろうと思いました。去年だったらそこで『終わったな』と思っていたのですが、今回は一気に詰めるのではなく、徐々に追いついていこうと冷静に考えられたし、その後も『このままいけば勝負になるかな』と思えた」と振り返った。

 体調は万全ではなかったという重友だが、自分の意思でペースを抑え、苦しかった10kmから20kmは、16分56秒、17分02秒とリズムを守ったことでハマった。これまでの経験を最大限に生かすレースをできたことが、優勝につながったと言える。

 また、25kmから飛び出して2時間25分44秒の自己ベストで2位になった堀江も、「沿道から『後ろと10秒差』と言われた時は待つかどうか迷ったんですが、追いつかれたらまたスタートに戻ってしまうと思ったし、去年はここから前を追ったというのを強みにしてペースを上げました。ひとりで逃げる展開になったのは初めてでしたけど、その苦しみや、逃げる時は緊張してしまうというのを実感できたのはよかったと思う」と手応えを感じていた。

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