【箱根駅伝】歴代2位で完全優勝。東洋大の勝因と駒澤大の誤算 (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 中西祐介/アフロスポーツ●写真 photo by Nakanishi Yusuke/AFLOSPORTS

 それでも中村は意地を見せた。19.7kmでスパートした後、食らい付いてきた山中の仕掛けには追いつけずに9秒遅れたが、東洋大の田口には10秒差を付けて2区の村山につないだ。

 東洋大の2区服部勇馬(2年)は、「唯一調子が上がりきっていなかった」(酒井監督)という状態だった。少し抑え目に入った服部に対して、駒大の村山は5kmを14分02秒で通過するハイペースで入った。4.2kmで日体大の本田匠(4年)をとらえ、10㎞では東洋大との差を1分ほどに広げ、独走態勢を作り出した。

 ところが「抑えろ、抑えろと指示したけど、突っ走ってしまって……」と大八木監督が苦笑するように、後半になると脚がつって失速。服部の追い上げを許して16秒差まで詰められた。大八木監督は「村山が指示通りに最初の5㎞を14分20秒くらいで入っていれば、1分半は開けられたはず。そうすれば3区の油布ももっと余裕を持って走れただろうし、4区が良かったから往路優勝できた。復路の流れも変わったかもしれない」と悔しがる。

 想定では2区で1分リードし、3区の油布が設楽悠太(東洋大・4年)に追いつかれても、4区の中谷で勝負して5区の馬場翔大(2年)につなげば、悪くてもほぼ同タイムで往路を終われると考えていたのだ。

 だが駒大の目論見は東洋大にひっくり返された。3区で東洋大の設楽悠太は駒大の油布を逆転、1分21秒差をつけた。4区で21秒差まで盛り返されたが、5区では設楽啓太が1時間19分16秒でキッチリ走った。酒井監督は「(5区で)駒大の馬場があそこまで走るとは思わなかった。最後の下りでは抜かれるんじゃないかとヒヤヒヤした」と笑うが、51秒差の往路優勝となったのだ。

 往路で遅れをとった駒大・大八木監督の逆転への布石は、6区で差を詰めて東洋大をターゲットに入れられる位置まで迫ることだった。

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