【箱根駅伝】歴代2位で完全優勝。東洋大の勝因と駒澤大の誤算 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 中西祐介/アフロスポーツ●写真 photo by Nakanishi Yusuke/AFLOSPORTS

 また酒井監督は、来年以降のことも考え、2区に2年生の服部勇馬を起用することを早くから決めていたという。そう考えた裏には、エースである設楽啓太(4年)の5区起用という構想があったからだ。彼なら1時間18分台で上れる。もし2区までで駒大にリードされても、5区の啓太でトントン以上に戻せ、復路で勝負できると考えた。それを田口の復調で実行に移せたというわけだ。

 酒井監督は12月29日の区間エントリーを見て、その構想は当たったと考えた。駒大は予想通り、1区に中村匠吾(3年)を使っただけではなく、2区に村山謙太(3年)、3区に油布郁人(4年)と主力を置き、4区にも全日本5区区間1位と勢いのある中谷圭佑(1年)を並べてきた。復路重視というこれまでのスタイルを変え、往路優勝で勢いを付けようとする戦略できた。

 それに対して、酒井監督が弟の悠太とともに啓太を当日変更可能の補欠にしたのは、もし当日の天候が前回大会のような向かい風になったら、体重が軽い啓太には不利になるため起用を控える余地を残そうという思惑があったからだ。5区にエントリーした成瀬雅俊(1年)でも1時間20~21分では上れる。その場合は啓太を3区に入れる案のほか、復路の7区で使ったり、9区に持ってきて駒大のエース窪田忍(4年)にぶつけるなど、復路重視への戦略変更も視野に入れていた。

「田口だけでなく、全日本まで使えていなかった上村和生(2年)や高久龍(3年)、それに大津顕杜(4年)などの調子が非常に上がってきたことが大きかったですね。今回外した延藤潤(4年)や淀川弦太(3年)、寺内将人(2年)、それに下り要員だった佐久間建(4年)も順調でいい仕上がりをしていたから、最後の最後まで誰を使おうか迷っていたくらいです」(酒井監督)

 結局、当日は心配した風もなく、啓太の5区起用が決まった往路。1区は早稲田大学がエース大迫傑(4年)を起用したため、スタートからハイペースの展開になった。その中で田口は余裕を持って走り、後半の日本体育大学の山中秀仁(2年)の仕掛けにも余裕を持って対応していた。

 一方で区間賞本命の駒大・中村は表情を歪めるシーンを見せた。「中村は1週間くらい前にケガをしていたから自重していたんです。あそこまでいったらやるしかなかったけど、ちょっと余裕はなかったですね」と駒大の大八木弘明監督は明かす。

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