【陸上】日本短距離界に大きな刺激。桐生祥秀vs山縣亮太が生み出す力。 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本勉●撮影 photo by Kishimoto Tsutomu

 8日の決勝は、両者のそんな状態が出たレースだったと言える。スタートのリアクションタイムは、桐生が山縣より0秒021遅れる0秒140。いつものようにリラックスしたスタートを切った山縣が19mの手前で秒速10mまで加速したのに対し、桐生はちょうど20m付近。硬さが見受けられた桐生はそのまま山縣の先行を許した。

 結局、山縣はその後も走りを崩すことなく10秒11でゴール。桐生は右隣のレーンの高瀬慧(富士通)と競り合いながらも、10秒25の2位でゴールした。

「自分が織田記念で勝っていたのでちょっと自信があったというか、今回も勝とうという気持ちは心の中に持っていたし、守りに入っていたというのもあります。でも山縣選手は予選も後半までリラックスした走りをしていたし、自分の走りに徹していたと思う。そういうところに差があったと思う」

 この大会では自分が一番ではなく、山縣が一番だったから、今度は彼を目標にして強くなっていきたいとも語った。日本選手権という舞台にもかかわらず、動じることもなくキッチリと目標にするタイムと順位を達成した山縣のメンタルの強さも学ぶことができた。

 一方、山縣は「このタイムにまだまだ納得してはいけないが、いろんな思いがある中で、やっと日本選手権(の優勝)を獲得できで本当に嬉しかった」と安堵の表情を見せる。

「桐生くんが速いのはわかっているし、気にして勝てるような相手ではないので、どれだけ自分のレースに集中するかという意味合いで、気にしませんでした。レース中はもちろん気にすることは無かったし、本当に落ち着いて100mを走りきれたと思います。予選でA標準を突破して気持ちが楽になったのは確か。"予選と同じ感じで走れば、それなりの結果がついて来る"という自信を持ちながら、決勝のレースに臨めました」

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