【陸上】17歳・土井杏南「陸上を第一に考えた生活をしている」 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 高校は、練習環境が整っている強豪・埼玉栄高校に進学を決めた。陸上部の顧問である清田浩伸監督は、土井と同じロンドン五輪リレー代表の高橋萌木子(富士通)などを育てた実績がある。加えて、個人の意志を尊重する指導スタンスをとってくれた。確固たるスタイルを持ち「頑固者なんです」という土井には何よりありがたかった。

 快適な環境の中で、高校生になった土井は急速に成長。2011年、高校1年生で臨んだ5月の埼玉県高校総体ですかさず自己ベスト(11秒60)を記録した。

ロンドン五輪では女子4×100mリレーの第1走者を立派に務めた土井。photo by JMPAロンドン五輪では女子4×100mリレーの第1走者を立派に務めた土井。photo by JMPA「自分の可能性もゼロじゃない」
大いなる夢を抱いた五輪舞台

 ところが、7月の世界ユース選手権では思うような走りができず、それからは記録も伸び悩み、足踏み状態となった。試行錯誤を繰り返していた土井はそのオフ、清田監督と相談して東京の国立スポーツ科学センター(JISS)でのトレーニングを始めた。

「JISSでは、それまでやったことのなかった補強運動(ランニングで使用する筋肉群などの強化)にトライしてみたかったんです。トレーニングを重ねて体幹部を鍛えると、それまでとは(自分の体が)見違えるように変わったんです。お尻の周りに筋肉をつけたことで、骨盤のあたりにうまく力が入るようになり、(体が前に)グイッといけるようになって、スタートでさらに前に出られるようになりました」

 もともと土井はスタートが得意だったが、その武器に一層磨きがかり、スピードに乗っても軸がブレない走りができるようになった。そして翌年、2012年2月の日本ジュニア室内60m予選で日本タイ記録(7秒40)を刻み、五輪イヤーに飛躍するきっかけをつかんだ。

「2011年の日本選手権(4位)では、『(自分は)まだまだだな』と思いました。でもその後、まだ冬場の室内で記録が出たときは、『(シーズン前の)この程度の状態でも、これだけのタイムが出るんだ』と、かなりの自信になりました。結果、4月からの屋外シーズンでは、ロンドン五輪のB標準記録(11秒38)を出す気満々というか、そういうのを狙わなければいけないなと思いました。せっかく五輪がある年だし、チャンスがあるなら、出たいと思っていましたから」

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