東京パラ、マラソンのメダル候補。37歳新星・永田務は「劣等感が強み」 (3ページ目)

  • 星野恭子●文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by Kyodo News

 パラリンピックを強く意識するようになったのは約2年前。2019年春に現在の勤務先、新潟県障害者交流センターに指導員として就職後、上司から勧められたのがきっかけだ。だが、パラ挑戦には2つの条件を突破する必要があった。

 ひとつはパラスポーツの公平な競技を担保するために障害の程度に応じてグループ分けする、「国際クラス分け」の取得だ。パラのマラソンの上肢障害クラスはT45かT46の選手が対象なので、もし永田の障害がより軽いT47と判定されれば、対象外だ。なかなか受検機会にも恵まれず不安が募るなか、2020年3月、思い切ってオーストラリアでの大会に出場して「国際クラス分け」を受けると、T46と判定され光が差し込んだ。

 もうひとつは、「世界ランキングの対象となる国際公認レースでの記録」だ。国際競技団体である世界パラ陸上(WPA)が公認する大会で出さねばならないが、コロナ禍の急速な広がりで、大会が軒並み中止になってしまった。期限が迫るなか、永田の実力や努力を耳にした関係者の尽力により、「日本パラ陸連推薦枠」という形でびわ湖毎日マラソンへの出場が実現。ようやくこぎ着けた「一発勝負のチャンス」で、永田は見事に結果を出したのだ。

 世界の頂点を狙える位置にいる永田だが、「学生時代から強みや得意種目は見当たらず、ずっとコンプレックスだった」と明かす。1番を目指しても、いつも2番か3番止まりで、「弱いから、もっとがんばろう」「練習すれば、まだ速くなれる」と自身を鼓舞してきた。「劣等感が自分の強み」といい、目標を次々と掲げ挑戦しつづけるのは、「これだけは負けない」ということを探し求めているからだ。

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