日本が誇る世界初の新型スポーツ用義足。
パラアスリートと世界に挑む (2ページ目)
近年、世界のパラ陸上界では、オットーボック社(ドイツ)とオズール社(アイスランド)の板バネがトップシェアを誇っている。その"二強時代"に風穴を開けようと、今、日本国内では国産の板バネの開発が活発に行なわれている。
そのひとつが、ミズノと、今仙技術研究所との共同プロジェクトだ。はじまりは7年前の2013年。同年9月に東京オリンピック・パラリンピック開催が決定したことを機に、ミズノでは自国開催の祭典に向けて、さまざまなプロジェクトが動き出し始めた。そのひとつとして、ミズノのグループ会社ミズノテクニクスでは自社のカーボン技術を用いて、パラリンピック競技のアスリートを支える用具の開発ができないかという話が浮上していた。
一方、今仙技術研究所では日常用義足が主流だったが、07年頃からスポーツ用義足の開発にも着手。08年北京パラリンピックでは同社の板バネを使用した山本篤が男子走り幅跳びT42(片脚大腿切断など:現在はT63)で銀メダルを手にしている。しかし北京後は、オットーボックとオズールがシェアを伸ばし、日本人のトップアスリートたちもこぞって両社の板バネを使用し、好記録を生み出していた。
それでも現場に行くと、さまざまな声が聞こえてきていた。今仙技術研究所の義肢装具士・浜田篤至氏によれば、要望が多かったひとつがスパイクソールだった。一般的に義足アスリートは市販のスパイクのソール部分を自分で切り取り、削って厚さを調整したうえで板バネの先端に接着していた。しかし、それではすぐにはがれてしまうというトラブルを抱えていた。
さらに機能的にも、板バネで走るための最適な専用ソールが求められていたため、今仙技術研究所としては、板バネだけでなくスパイクソールを含めた開発を手がけたいと考えていた。そこで同社が白羽の矢を立てたのが、高度なカーボン技術を持ち、スポーツシューズも手掛けるミズノだった。
翌14年8月からプロジェクトがスタート。翌15年には試作品第一号の開発コードネーム「α(アルファ)」が完成した。さらに改良を重ね、16年には大腿切断、下腿切断の両方の人に対応した「KATANAβ(カタナベータ)」と、国産初の板バネ用スパイクソールを完成させ、一般販売に漕ぎつけた。
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