全豪10度目優勝の国枝慎吾が「今がいちばん強い」と言える理由 (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 第1セットは好調のリードが試合の主導権を握った。力強いショットで国枝を翻弄し、4-1と突き放しにかかる。だが、国枝も序盤からウィナーを取るなど、決して調子が悪いわけではなかった。「リードはここまで100点の出来だけど、勢いは続かないだろうという思いもあった」。国枝は自分の力を信じ、あえて真っ向から打ち合いを挑んだ。

 先行されながら、バックハンドのトップスピンなどを決めて追い上げ、デュースに持ち込んで第6ゲームをキープしたのが大きかった。その勢いが流れを引き寄せ、続く第7ゲームもポイントを先に取られながらも、左利きの相手に有効なバックハンドのダウンザラインを決めてブレークに成功。そこから戦況をひっくり返し、一気に5ゲームを連取した。

 第2セットも1-3と先行されたが、強気を崩さず再び逆転に成功。第8ゲームは国枝にしては珍しいダブルフォルトを犯しながら、相手の4度のゲームポイントをしのぎ、キープした。リードもこの日最速の141キロのサーブを決めてさすがの粘りを見せるが、追いつくことはできなかった。

 グランドスラムの決勝にふさわしい、ハイレベルかつ紙一重の戦いだった。そのなかで決してあきらめることなく、勝機を見出し、ひたすらに自分のテニスを追求した国枝のすごさを、あらためて感じる試合だった。

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