「ユニバーサルリレー」って何だ?多様性を象徴する種目の魅力とは (3ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 高野コーチによれば、前日練習で竹村と生馬のつなぎをはじめ、チェックマーク(前走者が到達したら次走者がスタートする目印)の適切な位置を精査し、当日になって選手の体調や天候(風向き)などから最終的なマークの位置を指示したという。「選手はみなマークどおりスタートを切っていた。届かなかったのはすべてスタッフの責任」と分析したうえで、今後に向け、「各走者がスピードに乗った状態でいかにタッチできるか。コツコツ練習するしかない」と、さらなる進化を誓った。

 予選レースはその後、盛り上がりを見せた。3組でアメリカが中国の持つ世界記録(47秒57)を上回る47秒08をマークするも、4組では中国が46秒35をたたきだし、再び世界記録保持者に返り咲く意地を示した。決勝には、タイム上位の4チームが進むことになっていたが、ビデオ審議の結果、好タイムを出したドイツ、フランス、イギリスも失格になり、結局、スペイン(予選タイム49秒45)、2組のロシア(同47秒88)、アメリカ、中国が決勝に駒を進めた。

 決勝では、金メダリストを揃え、「個の力」で優位に立つ中国が優勝を万全にしようと予選から一部選手を入れ替え、女子、男子、男子、女子という独特の選手編成で仕掛けてきた。層の厚いアメリカも、ベストメンバーで対抗。レースは中国が先行したが、最終車いす区間で男子を起用したアメリカが、中国の女子選手を抜き去り、世界選手権初代王者の称号を手にした。

 勝利に沸くアメリカ選手からは、「リレーは高校以来。大声援を受けて楽しかった」「多様で速いメンバーが協力してつなぐのは楽しい」「急増のチームだが、うまく連係できてよかった」「来年の東京大会が楽しみ」といったコメントが聞かれた。

 この日1日で、URの世界記録は一気に1秒22も縮まった。チーム編成の事情からか、2チームが欠場し、日本を含む4チームがタッチミスで失格した。進化の可能性と難しさ――まだ発展途上の種目であることを示したが、アメリカチームのコメントにもあるように、「パラスポーツならではのおもしろい種目」として、選手にも観客にもアピールできたのではないだろうか。

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