上地結衣は攻撃テニスを貫く。元女王vs現女王、新たな物語の始まり (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 ただ、この上地の分析を、デグルートはやんわりと否定した。

「そこまで、自分のプレーを変えようとは思っていなかった。ただ、自分がそれまでやっていたプレーのレベルをあげ、ミスを減らすことを考えていた」

 果たしてこれが本音か、あるいはライバルに手のうちを知られることを嫌ったがために、うそぶいたのかはわからない。ただ、上地のプレースタイルの変化について水を向けられると、彼女は「そのとおり」と言下にうなずいた。

「最近の彼女が、プレーを変えていることには気づいていた。彼女は確実に強くなっているので、私たちの試合は接戦が多くなった」

 そして、だからこそ現女王もまた、元女王のプレーに対応すべく成長を続けているという。

「私のプレーも、彼女のプレーに応じて変わっていく。片方が変えれば、もう片方も適応する。そうやって私たちは、お互いをよりよい選手にしているのよ」

 上地との関係をそう定義するデグルートは、ライバルが自身にもたらした成長とは、「我慢強さ」だと言った。

「根気よく戦うことを、結衣との試合で学んだわ。彼女と対戦するたび、私は我慢強くなっている」

 上地が確立しつつある攻撃テニスに対抗すべく、デグルートが獲得しつつあるのは、緩いボールも使いながら戦う粘り強さだ。今回の全米オープン決勝では、それら互いが磨きをかけたプレーがぶつかりあい、わずかに上回ったデグルートが勝者となった。

 この試合の結果により、両者の対戦成績は14対14の五分。変化と進化を続ける切磋琢磨の物語は、新たなチャプターの始まりを迎えた。

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