車いすテニス界の新星は、国枝慎吾に憧れ「元気づけられる人」を目指す (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

「中学のときは、まだ自分の障がいを克服できてなくて試合に出るのも自発的じゃなかったし、勝っても楽しいと思えませんでした。でもこのワールドチームカップで初めてジュニアトップレベルの選手を見て、自分よりも年下の子がすごく強かったし、同い年でも体格が全然違っていて、何よりみんなすごくキラキラしていたことに、本当に驚きました。勝った試合もあったけど、全然歯が立たない試合もあって、"同じレベルまで練習して、もう一回戦いたい"と、思ったのはこの時が初めてでした」

 強くなりたい――。視界が広がり、歩むべき道が見えた。その気づきが練習の質を上げ、「シニアの大会にも出場する」という明確な目標にもつながった。実際にワールドチームカップの3カ月後の8月からは、シニアの大会にもエントリーするようになった。

 近年、国内の女子車いすテニス界は層の厚みを増す。世界ランキングは2位でリオパラリンピック銅メダリストの上地結衣に追いつけとばかりに、同11位の田中愛美、同15位の大谷桃子、同23位の高室冴綺(たかむろ・さき)らがしのぎを削る。船水はそのなかで揉まれながら、一段一段、階段を登り始めている。

 そんな船水に今年1月、大きなチャンスが巡ってきた。世界4人のみが出場できる世界ジュニアマスターズにエントリーすることになったのだ。当時、世界4位だった船水はワイルドカードでの出場だったが、シングルス準優勝、ダブルスで優勝という好成績をおさめた。

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