東京パラ出場を目指す菅野浩二。ある助言を機にクァード転向を決意 (3ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 そこで、菅野にとっての転機が訪れる。この日本マスターズに出場していたリオ代表の齋田悟司選手に「クァードで東京を狙えばメダル候補になれるんじゃないか?」とアドバイスされたのだ。

「男子で通用しないからクァードに行くと考える人もいるだろう、でもチャンスがない人もいるんだから、やってみたら? ということも言ってもらいました。この時35歳。自分も東京を目指せるなら、クァードで頑張りたいと思ったんです」と、クラス転向を決めたきっかけを振り返る。

 その後はクァード選手として一から実績を積むため、国内の大会に積極的にエントリー。その思いを所属先に伝えると、パラアスリートとしての活動に理解を示し、支援してくれることになり、背中を押された。当初はクァードならではの駆け引きや配球に戸惑いもあったが、男子のプレーで鍛えられたスピードや判断力などは、逆に生きると感じた。結果を求めるようになったなか迎えた昨年の日本マスターズで、クァードで初優勝を飾ったことは大きな自信になった。

 今年行なわれたワールドチームカップ(世界国別選手権)で、テニス人生で初めて日本代表に選出された。だが、以前のように楽しんでテニスをしていた時にはなかった、"勝ち負けへのこだわり"が強すぎて空回りし、本来のプレーができずに苦い思い出が残った。

 それ以降は、メンタルトレーニングにも取り組み、転向2年目の今季、6月のBNPパリバ・オープンで成果が表れた。準決勝で世界1位のデビッド・ワグナー(アメリカ)を、続く決勝でも世界3位のアンディ・ラプソーン(イギリス)を撃破したのだ。世界ランキングは4位まで浮上し、今やライバルから追いかけられる立場になった。

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