始めて半年で国際大会優勝。パラ陸上に現れた超新星、井谷俊介はまだまだ伸びる (2ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 五十嵐和博●写真(人物) photo by Igarashi Kazuhiro

 それだけに、十分な練習を積み、自信を持ってスタートラインに立てたら、いったいどんな走りができるのか――。

 現在、23歳。三重県に生まれ、高校までは野球に打ち込み、大学に入ると、子どもの頃から好きだったカーレースを始めた。「プロのドライバーになる」という夢への途中、交通事故に遭い、右脚の膝から下を失う。2016年2月のことだった。

「これから、どうしたらいいんだろう」

 将来への不安に襲われ、愕然とした。それでも、想像以上にショックを受け、悲しむ家族や友人たちの姿を目の当たりにして、「前向きにがんばることで、みんなを笑顔にしたい」と、挑戦心を取り戻した。

 義足でのリハビリは強い痛みを伴い、医師からは、「歩くのに半年、走るのは1年以上かかる」と言われ、心が折れそうになることもあったが、周囲の励ましを力に、毎日リハビリの時間以外に1時間、病院内の歩行を自分に課した。おかげで切断手術から1カ月半でスピード退院し、大学にも復学した。

 陸上競技との出会いもその頃だ。三重県内で活動する障がい者のためのスポーツクラブを母が見つけ、一緒に訪ねた。初心者向けの競技用義足を借り、久しぶりに走ると、体を動かす楽しさが甦った。ここからは自然な流れで、「2020年東京パラリンピック出場」を目指すようになる。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る