国枝慎吾が最後に見せた意地。銅メダルから始まる東京への道 (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 吉村もと/MAスポーツ●写真 photo by Yoshimura Moto/MA SPORTS

 ちょうど1年前の9月、国枝は全米オープンで優勝し、自身5度目の年間グランドスラムを達成。ロンドンからの3年半は、今までにないくらい充実していた。それが、最後の半年で崩れてしまった。「去年にパラリンピックがあれば、と何度も思った」と、国枝は声を絞り出す。

 そんな国枝が、リオで最後にプライドをかけて戦った試合があった。男子ダブルスの3位決定戦だ。齋田悟司(シグマクシス)とペアを組み、日本の後輩、三木拓也(トヨタ自動車)・眞田卓(さなだ たかし/フリー)組と対戦した。

 三木・眞田組が強打で押してくるのに対し、国枝と齋田はロブを上げ、確実につなぐテニスを選択した。コートの横も後ろも広くとられたセンターコートでは、齋田の高い守備力がより生きるからだ。ただ、国枝も齋田も本来は攻撃的な選手。守りに徹するテニスは「やりたくないプレー」というところが本音である。だが、ここはパラリンピック。「内容よりも、勝つか負けるかを大事にした」

 その言葉通り、ラリーに持ち込み、ボールが高く跳ねるショットで相手のミスを誘った。ベテランペアの経験が光る、勝ちに徹した試合だった。

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