国枝慎吾が最後に見せた意地。銅メダルから始まる東京への道

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 吉村もと/MAスポーツ●写真 photo by Yoshimura Moto/MA SPORTS

 国枝慎吾(ユニクロ)のリオパラリンピックが終わった。銅メダルを首にかけた国枝は、静かにこう語った。

「この銅メダルで、報われた」

齋田悟司(左)と銅メダルを獲得し、最後は笑顔で終えた国枝慎吾(右)齋田悟司(左)と銅メダルを獲得し、最後は笑顔で終えた国枝慎吾(右) パラリンピック2連覇中の車いすテニス界の顔と言える国枝。だが、今季は右ひじのケガの影響でランキングを落とした。リオではシングルスの第6シード。「チャレンジャー」として臨んだパラリンピックだった。ギリギリまで調整を重ね、何とか大会に間に合わせたが、ベスト8で力尽きた。

 大会前に自身も不安視していたのは、試合勘だった。今年に入って出場した大会数は、優勝したゴードン・リード(イギリス)が13、第1シードのステファン・ウデ(フランス)が15なのに対して、国枝はわずか5大会のみ。

「いろんなものの嗅覚が衰えていた」と丸山弘道コーチが危惧していたように、準々決勝のヨアキム・ジェラード(ベルギー)戦では、ショットのコースが単調になり、ボールコントロールが浅くなったところを強打で突かれるなど精彩を欠いた。格下相手だった2回戦、3回戦でも、振り切りの弱さに首をひねっていた。すぐに練習で修正を試みたが、最後まで感覚は戻らなかった。

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