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2024年ガールズケイリン優秀新人賞の熊谷芽緯「もう我慢できない」と狙う先行逃げ切りがもたらしたもの (4ページ目)

  • text by Sportiva

変顔も得意だという熊谷 photo by Gunki Hiroshi変顔も得意だという熊谷 photo by Gunki Hiroshiこの記事に関連する写真を見る

【「きっとできる」と前進】

 悔しい思いを抱えながら養成所を卒業した熊谷は、最初のレースとなったルーキーシリーズの3開催目(6月)で優勝を果たす。ここで「力がついてきているなとひと安心した」が、7月にその気持ちはもろくも打ち砕かれる。

「最初の予選で石井寛子(東京・104期)さんと同レースで6着となり、こんなに厳しいんだと思い知らされました。『あなたはまだ安心できません』と言われたみたいで」

 石井は、2024年のガールズグランプリ覇者の大ベテラン。熊谷はそのレースで先行逃げ切りを目指し、残り1周から力強く踏み出したが、第3コーナーで石井にかわされると、あとは引き離される一方。力の差をまざまざと見せつけられた。

 熊谷はその後も6着、7着が多く、そのたびに悔しさがこみ上げてきたが、「大丈夫、がんばればきっとできる」と自分に言い聞かせた。また、母から教えてもらった「らしくあれ」という言葉も後押しとなった。「全力を出し切って自分らしい走りができたら、前向きに次のレースに向かえたし、気持ちも切り替えられるようになりました」と語る。

「高校時代は本当にメンタルが弱かったんです。大会の回数が少ないので、余計にここで勝たなきゃと気持ちが入りすぎてしまって......。結局、負けて泣いて、立ち直れなかったんです。でも、ガールズケイリンはすぐに次の開催がくる。だから、泣いている暇なんてないぞと思って、めちゃくちゃ気持ちが強くなったと思います」

 そうして1年かけてメンタルを強化させていくと、デビュー2年目の2024年11月に、初めてGⅠ開催に出場できた。「こんなに早くにGⅠに出場できるとは思わなかった」と喜んで挑んだのが、競輪祭女子王座戦だった。優勝者には最高峰のレース「ガールズグランプリ2024」への出場権が与えられる重要な開催で、出場できるのは選抜された28選手のみ。ここでも彼女は並みいる強豪選手のなかで自身のスタイルを貫いた。

「怖さもありましたけど、もう逆に吹っ切れていて、強い人しかいないから自分らしいレースをしようと思いました。だから前を取って突っ張って逃げたいと。それで2日目に3着に入れたのが、すごくうれしかったです。結果はどうであれ、怖がらずに自分の走りができたことはすごく自信になりました」

 今後の目標は「すべてのGⅠに出場すること」。そして、「絶対にガールズグランプリには出たい」と意気込む。

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