2024年ガールズケイリン優秀新人賞の熊谷芽緯「もう我慢できない」と狙う先行逃げ切りがもたらしたもの (3ページ目)
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【メンタルが鍛えられた養成所時代】
養成所は競輪選手になるための厳しい訓練と学科課業の日々。競走訓練や記録会などでの順位やタイムで能力が評価されるシビアな世界だ。ひとりひとりが決死の覚悟で入学してくるなか、熊谷には心がけていたある思いがあった。それが「みんなと仲良く楽しむこと」。花の学園生活を思わせるような言葉だが、そこには理由があった。
「人間関係によるストレスがかかることによって気持ちが落ちてしまって、タイムも落ちることがあるかもしれないと考えていました。だから、仲良くして、みんなで切磋琢磨して、ストレスのない生活を送ることで、自分も強くなれるんじゃないかと思いました。養成所では個々のタイムが重要になりますが、チームとして考えないといけないかなと思っていたので、みんなと積極的にコミュニケーションを取っていました」
熊谷はリーダー的なタイプではなく、あくまでチームの輪を作り出す盛り上げ役。時には得意の変顔をして周囲を和ませていたという。そうして自ら競技に集中できる環境を整えながら努力を重ねたが、すぐに思うような結果を出せたわけではなかった。
養成所では全3回の記録会があり、その成績別に色の違う帽子が与えられる。上から金、白、黒、赤、青の順だ。熊谷は第1回目の記録会で最低レベルの青となってしまった。「スピード、持久力ともに劣る者」という評価だ。
「悔しいと思いましたし、甘くはないなとも思いました。そこから改めて心を入れ替えました。言われたメニューに集中して、そこで120%出し切るように意識していました」
その結果、第2回記録会では白帽を獲得。「着実にステップアップできている」と安堵した。しかし第3回目では白帽に届かなかった。
「1種目だけ0.001秒足りなくて......。落ち込みましたが、どこかで甘えが出ていたんじゃないかなと思いますし、選手になってからは絶対にこういう思いをしたくないと思いました。今となっては逆によかったかなと思います。養成所で悔しい思いができたおかげで、今少しずつ成績がついてきているんだと思います」
養成所での順位も23人中8位と目指していたトップ3には入れなかった。これらの経験を本人は「メンタルトレーニングだった」と振り返っている。
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