世界と戦う日本代表選手らを笑顔に 栄養面でサポートするプロジェクトのリーダーが語る「原点」 (4ページ目)
しかし、トップアスリートにはそれぞれの哲学があり、成功体験がある。簡単には外から意見を取り入れてはくれない。ここで栗原の大学時代の経験が生きた。
「私自身の大学時代を振り返ると、栄養やコンディショニングに関する知識が不足していたから、3、4年生になって伸びなかったんだと思います。自分の失敗例を挙げながら、アスリートにお話することもありました。そうすると、私とは比べものにならないほどの実績を持つ選手たちも真剣に聞いてくれます」
2016年リオデジャネイロオリンピックから、味の素社はJOCから委託を受けて、『JOC G-Road Station』を運営するようになった。
「選手村の外のアクセスのいい場所に設置され、アスリートが立ち寄りやすく、食べ慣れた和軽食で栄養補給する環境ができました。それによって、我々のサポートは格段とレベルが上がり、『うま味』のきいたさまざまな食べ物を提供しています」
【笑顔でご飯を食べることが一番大事】
栗原が続ける。
「味の素という会社は、食卓においしさを届けることで成長してきました。でも、世の中の人たちは次のフェーズに入りかけている。おいしさ+αを求めていると10数年前に気がついたのです」
ニーズがそこにあるならば、対処しなければいけない。「保護者の悩みを解消するためには?」と栗原は考え続けた。
「そうしないと、子どもたちのために一生懸命にやっている保護者に失礼じゃないですか。その想いは今もあります」
食に対する意識の高い保護者と接するたびに思うことがある。
「多くの人が食に関する悩みを抱えています。食が細い、食べるのが遅い......悩みはそれぞれなんですけど、私はよくこう言います。『たくさん食べなさい』とか『これを食べないと』とか強制していませんか、食卓で勉強やスポーツの結果に関する話をしていませんか、と。食卓が楽しい場所にならないと、子どもたちは食べることを好きにはなりません」
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