【大相撲】通算連続出場回数歴代1位の玉鷲の「料理・絵画・手芸」の世界 土俵外では多彩なクリエイター (2ページ目)
【両親からの影響で手芸やDIYも】
この筆力! イラストを描くのも好きだという 写真/本人提供
――手芸を趣味にしたきっかけは。
玉鷲 母です。モンゴルの一般家庭って、そんなにお金持ちじゃないので、お母さんが頑張って余った生地でいろんなものを作って、それを使ったり売ったりして生活していました。お父さんも頑張って木を切って家を作ってくれた。そういうのを見ているから、お金を稼ぐのは難しいなあと子供心に思っていました。そんなこんなで、お母さんを見て、自分もぬいぐるみを作ったり、お父さんを見て、机を作ったりしました。
――家まで作ってしまうお父さんもすごいですね。関取は最近どんなものを作りましたか。
玉鷲 洋服以外は何でも作るんですよ。コットンの掛け布団カバーは2年くらいかかりました。最近、調子に乗ってミシンを買おうと思ったら、めちゃくちゃ高くてあきらめた。ただ、ミシンがあったら冬用のニットなんかも作ってみたいですね。DIYでは、子ども用のイスを作りました。でも最近、気づいたんです。買ったほうが安い!(笑)
――そんなこと言わないでください(笑)。
玉鷲 だから、最近は料理ばっかりですね。お店に行くと、たまに自分ならもっとおいしく作れるのに、なんて思ってしまうこともあるくらいです。
【もうすぐ40歳迎えるも「まだまだ成長できる」】
――九州場所中(11月16日)に40歳のお誕生日を迎えられます。これから何を目標にしていかれますか。
玉鷲 もう一回、三役に上がりたい、三役そろい踏みをやりたいですね。力は変わっていないけど、動きは鈍くなっているので、この状態でどうやるか。逆にここまで来たら、チャンスを探しています。ウェイトトレーニングはこれまで三日坊主で、10年以上やっていないんですが、やらなきゃと思うようになりました。まだまだ成長できる伸びしろがあるんです。
――変わらぬ向上心、すばらしいです。若い力士たちにも、関取の知見を伝えていってください。
玉鷲 自分は、なるべくいろんな人に声をかけるようにしています。奥さんには、「敵にアドバイスするな」ってよく怒られるんだけど(笑)。でも、自分だって、もっともっと強い敵がほしいじゃないですか。たまに、その人の癖を見て、「ケガするから直したほうがいいよ」と言ったら、後々「あのとき玉鷲関に言ってもらってよくなりました」と言ってくれることがあって、すごくうれしいですよね。部屋関係なく、角界全体が強くなったらもっといいなと思っているから、自分が経験したことは伝えていきたい。自分は自分で、若い人の真ん中に入って、若い血を吸ってね(笑)。40歳だと思わず、若い気持ちでやっていきたいですね。
【Profile】玉鷲一朗(たまわし・いちろう)/1984年11月16日生まれ、モンゴル・ウランバートル出身。身長189cm、体重178kg。片男波部屋所属。本名・玉鷲一朗。相撲経験なしで19歳の時に角界入りし、初土俵は2004年1月場所、新入幕は2008年9月場所。2015年3月場所で新三役となり小結に、2017年1月場所から自身最高位の関脇に昇進。その後、番付を上下しながら連続出場を続け、2019年1月場所では34歳2カ月で幕内初優勝、2022年9月場所では昭和以降では最高齢の37歳10カ月で2度目の優勝を飾った。2024年9月場所3日目で初土俵からの連続出場記録を1631回として歴代1位となり、その記録を1643回まで伸ばして、11月場所を迎える。
著者プロフィール
飯塚さき (いいづか・さき)
1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)、Yahoo!ニュースなどで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』では構成・インタビューを担当。2024年1月3日、TBS『マツコの知らない世界 新春SP』に貴景勝らと出演し、ちゃんこをはじめとする絶品「相撲メシ」を紹介した。
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