「365日中350日合宿」元・新体操日本代表、杉本早裕吏が語るフェアリージャパンの日常と東京五輪でのミス (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by YUTAKA/アフロスポーツ

【東京五輪後の生活は?】

 杉本さんは、東京五輪後、引退すると決めていた。新体操は競技人生が短く、24歳でも大ベテランで肉体的にも厳しくなったからだ。ところが2か月後、北九州市で開催される世界選手権への出場要請が届いた。最初は断るつもりだったが、山崎浩子強化本部長から「早裕吏が必要」と言われて、舞台に立った。

「山崎元強化本部長が最後(退任)でしたので恩返しの気持ちを込めて踊ろうと決めました」

 メンバーが変わったなかでも杉本さんはチームをまとめ、フェアリージャパンは団体戦種目別ボールなど2つの銅メダルを獲得。観客に最後の演技を披露し、有終の美を飾った。

 引退したら......1年ぐらいはゆっくりして、母親と旅行に行くなど、現役時代にできなかったことをしたいと思っていた。

 だが、数週間後、杉本さんが戻ってきた場所は、いつもの体育館だった。

「しばらくは新体操を離れてと思っていたんですが、あれ、戻っているぞって感じですね(苦笑)。アリーナにくると落ち着くんですよ。これからは指導者として自分の経験を次の世代に伝えていきたいですね。自分がした悔しい思いや申し訳ない気持ちを次世代の選手に感じてほしくないので。パリ五輪では、みんなが笑顔で終わってほしいと思っています」

 すでにナショナルトレーニングセンターで指導を始めている。これからはパリ五輪に向けて他のコーチと力を合わせて、日本の新体操を強化していくことになる。

 だが、そうなると、また350日もの合宿生活が待っているのだが......。

「新体操に全て捧げる。そういう人生なのかなって思います」

 その笑顔には、フェアリ―ジャパンに入る時と同じ強い覚悟が秘められているように見えた。

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毎週日曜日 15:30〜16:00

スポーツジャーナリスト・佐藤俊とモリタニブンペイが、毎回、旬なアスリートにインタビューするスポーツドキュメンタリー。
強みは機動力と取材力。長年、野球、サッカー、バスケットボール、陸上、水泳、卓球など幅広く取材を続けてきた二人のノウハウと人脈を生かし、スポーツの本質に迫ります。
ケガや挫折、さまざまな苦難をものともせず挑戦を続け、夢を追い続けるスポーツヒーローの姿を通じて、リスナーの皆さんに元気と勇気をお届けします。

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