モーグル金メダリストの里谷多英は今?「仕事がうまくいって上司に褒められるとうれしい」 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 藤巻 剛●撮影 photo by Fujimaki Goh

――現役を引退したあとは新たな部署を志望したのでしょうか。

「現在の事業局で、イベントを行なう部署を志望しました。私に何ができるんだろうと考えた時、以前にスキーの大会やイベントに携わったことがあって、そうしたイベント関係の仕事がいいというか、やってみたいと思ったんです。でも実際は、スポーツ系よりも文化系のイベントがメインで、それまでとはまったく違う世界の仕事だったので、(配属された)当初はわからないことばかりでしたね。

 それでもやってこられたのは、周囲の方々が本当に優しくて。私はわからないことがあれば何でも聞いてしまうのですが、それに対して、先輩、後輩かかわらず、優しく丁寧に教えてくれました。仕事上必要なことがあれば、外部の知り合いにも躊躇なくお願いして、手助けしてもらってきました。それは、現役時代も同様で、ずっと人に頼ってきたような気がします(笑)」

――アスリートから本格的に会社員となって、社会生活ではいろいろと大変なことがあったと思うのですが、すぐに慣れることができたのでしょうか。

「やっぱり最初は大変でした。練習がつらいとか、成績が出ないと苦しかったり、アスリートにはアスリートなりの苦労がありますが、個人的にはそのほうがラクだったなと思いました。4年に一度の五輪を目指して、自らの技術や体のことだけを考えて、まさに自分本位でしたからね。すべて自分の責任で、ある意味では好き勝手に行動できたんですけど、会社員となれば、そうはいかないじゃないですか。多くの人と関わることになって、アスリート時代とは正反対の状況に置かれたので、慣れるまでは結構時間がかかりました」

――それでも、取引先や営業先などに赴いた際には、里谷さんの知名度が武器になったりしたのではないですか。

「営業先に訪問する際、最初に先輩の方と同行してご挨拶させていただくと、名刺を交換する時に『あれ?』と反応されることは確かに多いです。たとえば、相手方が何人かいて、年配の方が若い方に『おい、おまえ、知っているか?』みたいなことを言われたりすると、なんか恥ずかしくて......(苦笑)。

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