桃田賢斗は東京五輪で金に最も近い。衝撃的な勝率は攻撃強化から生まれた (3ページ目)

  • 平野貴也●文 text by Hirano Takaya
  • photo by Kyodo News

 桃田のスマッシュは、相手にことごとく拾われており、攻め勝つ展開には至らなかったが、攻めに出る戦い方をできるようになったことで、終盤に疲弊した相手とのクオリティー勝負に持ち込むことができたのだ。

 優勝後の会見で桃田は「去年の決勝戦は、すごく簡単に負けた。今日はディフェンス主体ではなく、どんどん攻めていこうと、去年の試合のことも意識しながら試合をしたし、自然と自分のスピードに表れたと思う。そこが、自分が最後に粘れて、相手がバテた要因の一つかなと思う」と手応えを語った。

 いまや、全選手から研究され、追われる立場にある。12月17日に更新された世界ランクの上位10人を見てみると、25歳の桃田は上から4番目の年齢。16年リオデジャネイロ五輪の王者、諶龍(チェン・ロン=中国、30歳)、世界ランク2位の周天成(チョウ・ティエンチェン=台湾、29歳)といった年上の選手もいまだ強敵だが、今回のワールドツアーファイナルズで対戦したギンティン(23歳)らは、いずれも年下だ。桃田が憧れる、リー・チョンウェイや、五輪3大会金メダルの林丹(リン・ダン=中国)のように長くトップに輝き続けるためには、今後、力を伸ばしてくる後進も振り切らなければならない。

 桃田はファイナルズ優勝後に「相手が強くなると、攻撃の精度はまだまだ。ラウンド(上体を利き腕の反対側に曲げた状態)からのストレートスマッシュは、何度もアウトになった。スピードを上げた時のコントロールは、まだまだ。来年もスピードを上げて、コントロールをつけることをテーマに取り組みたい」とさらなる進化に意欲を示した。

 決勝戦でギンティンを破った桃田は、会場で日の丸を振って応援していた日本のファンを指差した。第2ゲームで心が折れそうになったと話した桃田の言葉の続きは「サポートしてくれている人たちを思い出して、ここで折れるわけにはいかないと思って踏ん張って、ファイナルゲームも(途中まで)負けていたけど、強い気持ちで制すことができたかなと思う」というものだった。

 出場停止の失態から、自身を見直し、あらゆるサポートを力に変えて、王者の座まで這い上がった。桃田は、歩みを止めずに進化し続ける。その先に、東京五輪の金メダルが必ずある。

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