2019.08.12

2年間休んでいた世界記録保持者。
鈴木雄介が強くなって帰ってきた

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 来年の東京五輪で、メダル獲得が有力視されている競歩。なかでも注目度が高いのが、20kmで世界記録を持っている鈴木雄介(富士通)だ。

 今から4年前の2015年、鈴木は3月に20㎞で世界記録(1時間16分36秒)を樹立した。だが、同年8月の世界選手権は、股関節痛によって途中棄権。その後、16年リオデジャネイロ五輪の選考会にも出場できず、治療とリハビリに専念していた。

北海道千歳市で行なわれた合宿で、山西利和(左)と練習に取り組む鈴木雄介(右) 18年5月の東日本実業団対抗選手権の5000mで2年9カ月ぶりに復帰。同年10月の全日本高畠大会で20kmに出場後、今年3月の全日本競歩能美大会で、4年ぶりの世界選手権代表入りを目指した。だが、ハイレベルなレース展開のなか、自己セカンドベストの1時間17分47秒で歩きながらも4位に終わり、20㎞の代表入りを逃してしまう。

 それでも、4月14日の日本選手権50km競歩に出場すると、3時間39分07秒の日本記録を出して優勝。50㎞で世界選手権代表に選ばれた。

 その50㎞挑戦の理由を鈴木はこう話す。

「東京五輪には是が非でも出たいと思っていたので、選択肢を広げるという意味もあって、試しました。本当は日本選手権で試して、今年10月の全日本競歩高畠大会で、東京五輪の50㎞の代表権を得るつもりでした。ただ、日本選手権は50㎞もしっかり組み立てられると思ったし、日本記録も出せるかなと思ってレースに臨んだのが正直なところです」

 鈴木は、日本選手権で優勝したとしても、2位に入るのはリオ五輪3位の荒井広宙(富士通)だと予想していたため、実績を考えれば自分が50㎞で世界選手権に出場するとは考えていなかった。しかし、その予想は外れて荒井は4位。鈴木が世界選手権の出場権を手にすることになった。迷ったものの今村文男コーチとも話して、「東京を目指すためにも暑い中でのレースを経験しておこう」と、結局、世界選手権に出場することを決めた。

 世界選手権の50km競歩の代表は、アジア大会で優勝した勝木隼人(自衛隊体育学校)と、昨年10月の高畠で優勝した野田明宏(自衛隊体育学校)がすでに内定している。日本選手権では、川野将虎(東洋大)が2位になったが、3人ともに世界選手権の出場経験がない。確実に結果を出すためにも、経験豊富な鈴木の存在がチームにとって必要だった。