2年間休んでいた世界記録保持者。鈴木雄介が強くなって帰ってきた (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

「東京でシミュレーション合宿をやって、いい感じでできていた。これからは、世界選手権へ向けて、暑い中でどう戦うかに注力していきたい。メダルを考えれば、今の状態を上げるというより、いかに戦術を持って戦えるかだと思う。これまでは『やらなきゃ、やらなきゃ』と追い込んで何回も失敗しているので、今はでき上がった調子を崩さないような練習をしていこうと思っています」

 そんな鈴木に、朗報がある。東京五輪の翌年、2021年以降の競歩は50kmと20kmがなくなり、30kmと10kmになる。とくに30kmは、彼の持ち味を存分に発揮できる種目になるはず。本人も「30kmというのは僕が一番パフォーマンスを発揮できる距離だなと思っている」と表情は明るい。

 また、20kmで世界選手権出場を決めている世界ランキング1位の山西利和(愛知製鋼)についてはこう話す。

「山西も(30kmを)やるようになれば、海外選手よりも彼が一番のライバルになる。一緒に練習をする機会が増えたけど、20kmは向こうの方が強いので、勝つ手段をいろいろ模索しています」

 ライバルでありながらも、互いを信頼しているとも言う。

「今までは海外選手を意識していたんですが、今は身近にそういう(競争する)存在がいて、お互いにいい結果が出るという確信を持って(練習が)できている」

 鈴木はいま、「心に余裕を持って練習に取り組めている」と話す。9月の世界選手権は、焦ることなく、来年の東京五輪へのひとつステップと捉えて、冷静に臨むだろう。

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