「稽古が足りないのに小結」錣山親方が新三役の愛弟子・阿炎を評す (3ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 そうなると、やはり鶴竜、豪栄道、そして白鵬が優勝候補になるのではないでしょうか。

 場所前、鶴竜についての近況はあまり伝わってきていませんでした。かつて(井筒部屋で)私の弟弟子でもあった力士なので、どんな時でもコツコツやっていることはわかっています。聞くところによると、場所前に腰痛も出ていたみたいですね。

 若手力士では、新入幕の貴源治に大いに期待しています。

 年齢は22歳。昨年まで貴乃花部屋に所属していた力士で、19歳で新十両に昇進していますが、どういうわけか、2年も十両でくすぶっていました。

 しかし、先場所で十両優勝。一気に才能が開花した感があります。

 この力士が持っているものは、とにかく素晴らしいです。先場所くらいから、師匠だった貴乃花が横綱になった時のような、すごい体になっていました。

 唯一気がかりなのは、阿炎と同様、稽古があまり好きではないところ。今後の努力次第では、かなり上を狙える逸材であることは間違いないだけに、がんばってほしいんですけどね......。

 力士にとって、名古屋場所というのは蒸し暑さとの戦いでもあります。体力、スタミナの維持が、勝敗の行方を左右するポイントとなります。

 母親の死がきっかけとなって角界入り。私が初土俵を踏んだのは、1979年の名古屋場所でした。あれから40年――名古屋場所が来るたびに、心細い思いで力士としての第一歩を踏み出した、あの頃の自分を思い返しています。

photo by Kai Keijirophoto by Kai Keijiro錣山(しころやま)親方
元関脇・寺尾。1963年2月2日生まれ。鹿児島県出身。現役時代は得意の突っ張りなどで活躍。相撲界屈指の甘いマスクと引き締まった筋肉質の体つきで、女性ファンからの人気も高かった。2002年9月場所限りで引退。引退後は年寄・錣山を襲名し、井筒部屋の部屋付き親方を経て、2004年1月に錣山部屋を創設した。現在は後進の育成に日々力を注いでいる。

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