金メダルを獲得してもスピードスケート小平奈緒が現役を続ける理由 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 だが、そのカルガリーの大会は、リンクの改修に入らなければ次のシーズンに間に合わなくなるために中止になってしまった。結局、小平はポイントが高くなるW杯ファイナルにも出場しなかったため、500mW杯総合優勝を逃した。

 それでも小平は「もしカルガリーで世界記録を出していたら、来季へのモチベーションを失っていたかもしれませんね」と笑顔で話し、帰国後はすぐに次のシーズンへ向けて練習を再開していた。「本人は休みなく行きますと話していたけど、僕としたら手を上げて『休みたい』と言いたいくらい」と結城は苦笑する。

「でも、人間はトレーニングをしていて体が疲れるというのはそんなにないんだと思うんですね。疲れるというのは、頭が疲れることだと思います。常に余裕を持って(練習を)切り上げるというのが頭を疲れさせない。もし頭がいっぱいだと、次の日は頭が動かなくなるはずなんです。でも体はそんなに弱くはない。モチベーションが上がったりした時に、うまく乗せてあげれば、疲れはあまり感じないし、多少の時差があってもタイムは出るんです。

 そこをうまく調整できずに間が空いたりすると、いきなりすごい疲れを感じると思うんです。だから倦怠感を感じた時に『こうやったらもっとよくなる』と光を当ててあげれば、グッと食いついてきて『また滑りたい』となる。そこを見抜いて気をつけてあげることが必要なんです」

 小平は世界記録樹立を考えて練習を積み上げている。それは500mの36秒36の更新だけではなく、自身が持つ1000mの世界記録(1分12秒09)も意識している。彼女自身五輪後に、「あの1000mの世界記録はすぐに更新される記録だと思います。だからもっと、ダントツな記録を出さなければいけないと思う」と話していた。

 そんな貪欲さを持つ小平の充実期は、五輪の金メダルで終わるのではなくまだまだ続く。それを持続させているのも彼女の精神力の強さであり、すごさである。

(おわり)

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