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ショートトラック20年ぶりメダルへ。
応援団長・松田丈志が熱血エール (4ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi photo by AFLO

 競技の厳しさを知る美佳さんは当初、息子にショートトラックをやらせるつもりはなかったそうだが、自分からやると言った以上、妥協は許さなかった。家では撮影したビデオでスケーティングの研究を一緒に繰り返し、練習の行き帰りの車の中でダメ出しをすることもあったという。

 さらに母は継続することの大切さを息子に伝えた。その教え通り、当時から自宅で毎日続けているのがバイクトレーニングだ。子供の時は1日10分でもいいから毎日漕ぐように言われていた吉永選手だが、今では自ら、毎日朝晩それぞれ10kmを漕ぐ。

 吉永選手のスケーティングの特長は、高いスピードを維持できる持久力とコーナーリングの技術の高さにある。彼はショートトラックのコーナーリングでは、内側となる左足でスピードを生んで、外側になる右足で舵を取る。

 専門家に聞くと、吉永選手のコーナーリングは左足の氷を捉えている時間が長いので、その分コーナーリングでもスピードを落とさずに滑れるという。

"捉えが長い"のは、体の軸に近いところから蹴り始められているということであり、時速60kmにもなるスピードでも体の軸がブレないということだ。

 吉永選手は自分のスケーティングの基礎を作ってくれたのは母親だと語るが、高いスピードを維持する持久力とコーナーリングの技術はまさに母親の指導が土台になっているのだろう。

 仮に選手のモチベーションと能力が同じ場合、その成長のスピードはいかに正しい方向に努力するかにかかっている。吉永選手は元トップスケーターの母から、きめ細やかなアドバイスや自身の経験から学んだノウハウを吸収し、実践した分、成長のスピードが早いんだなと私は感じた。

 実は美佳さんがトップスケーターだった当時は、まだショートトラック競技が正式種目に採用されておらず、美佳さんはオリンピックに出場していない。

 吉永選手は実際に自分が競技者として成長し、オリンピックを目指せる立場になったときに、世界でトップクラスのスケーターだった母がオリンピックに出ることができなかった事実を受け止め、母の悔しさを感じたという。

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