過熱するフィーバーにも稀勢の里は「不動心」。新横綱の2週間に密着 (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • photo by Kyodo News


 翌日の綱打ちでは、真新しい純白の綱を初めて締め、「憧れだった」と自ら選んだ雲竜型の土俵入りを稽古した。指導役は、同じ二所ノ関一門である元横綱・大乃国の芝田山親方。三つ揃えの化粧回しは、「土俵の鬼」とうたわれた初代・若乃花が使っていたものを借用した。

 初代・若乃花は、2011年11月に59歳で急逝した先代師匠(元横綱・隆の里)のさらに師匠にあたる。先代は、土俵の鬼の師匠を敬愛してやまなかった。初代・若乃花の、いわば「孫弟子」にあたる新横綱にとって、万感をこめた土俵入りの稽古となったに違いない。

 その稽古の成果を見せる場となった、1月27日の明治神宮奉納土俵入りで、稀勢の里フィーバーは沸点に達する。初めての土俵入りをひと目見ようと、徹夜組を含めた1万8000人が明治神宮に殺到した。1994年11月の貴乃花の土俵入りに集まった2万人には及ばなかったが、その時は土曜日開催。平日でその記録に迫ったことは、異常な人気といえる。

 期待と熱気を全身に浴びながら、太刀持ちに高安、露払いに松鳳山を従え、1分28秒の雲竜型を披露。列席した八角理事長(元横綱・北勝海)が「この世界に入ってよかった」と興奮を隠せなかったほどの、堂々たる土俵入りだった。一方、当の本人は初の土俵入りを終えた後、「つま先から頭の先まで集中してやりました」と落ち着いた口調で胸中を語った。

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