【月刊・白鵬】横綱も認める強さ。初場所の琴奨菊は違っていた (3ページ目)

  • 武田葉月●文 text&photo by Takeda Hazuki

 私と対戦したときも、そこでさらに波に乗った状態でした。立ち合いからがぶり寄りで攻められたとき、私は「残せるんじゃないかな」と思っていたんですが、気がついたら一気に土俵際まで押し込まれて、そのまま押し出されてしまいましたからね。

 これまでの琴奨菊は、前半戦でバーッと勝利を重ねても、後半戦に入ってからはなかなか白星が伸びませんでした。真面目な性格が災いしてか、黒星を喫すると、変に考え込んだり、内にこもったりしてしまうことが見受けられ、終わってみれば、勝利数がふた桁にも及ばないことがよくありました。

 しかし、今場所の琴奨菊は違っていました。自信を持って、自分の相撲を取っていました。メンタル面の強化に加えて、体の使い方のトレーニングもしっかりできていると聞きましたから、この場所にかける気持ちは相当強かったんだと思います。

 13日目、小学生のときからライバルだという豊ノ島にこそ敗れましたが、1敗で迎えた千秋楽では、満員の観衆が見守る中、勝てば優勝という大関・豪栄道戦でも堂々の相撲を披露。突き落としで豪栄道を退けると、その瞬間、会場のボルテージは最高潮に達しました。

 日本出身力士10年ぶりの優勝を飾るとともに、31歳にして自身初の栄冠をつかんだ琴奨菊。その実力を考えれば、遅すぎる優勝ではありますが、今場所の戦いぶりからは年齢的な衰えは感じられませんでした。よき伴侶を得たようですし、これから一層気合いが入って、さらなる活躍が見込まれます。

 初優勝、本当におめでとうございます。

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