【大相撲】新大関・照ノ富士は、大鵬級の大横綱になる可能性がある! (2ページ目)

  • 福留崇広●文 text by Fukutome Takahiro
  • photo by Kyodo News

「右の相四つだからがっぷりになるのは仕方がない。そこから腕を返す、腰を寄せる、相手の上手を切るなどの工夫もなく、無策と技術のなさを露呈した」と師匠は見る。そして、続ける。「何より攻めが遅い。がっぷりになるのはわかっているんだから、早く先手を打たないといけない。工夫がない」。

 迎えた5月場所。師匠の教えを受て臨んだ、4日目に組まれた逸ノ城戦。右からの張り差しで右四つになると、相手が右から下手投げを打ったところを逃さなかった。左からの投げを打ち、200kgを超す巨体を揺さぶり一気の上手投げで勝負を決めた。時間はわずか8秒。「休まず攻めれば、自分の形になる。間を置くと相手に付け入る隙を与える」と師匠。その教えをすぐに本場所の土俵で実践した白星に、大いなる進化が表れていた。

 一方で綱取りへ伊勢ヶ濱親方は「右四つの型があるんだから、それを磨かないといけない。横綱になる人は、みんなそれぞれ自分の型があるからね」と語る。確かにそうだ。大関を3場所で通過した3人で言えば、北の湖には絶対的な右上手、千代の富士には左前まわし、朝青龍なら速攻という絶対的な武器があった。しかし、照ノ富士にはまだ、そこまでの型がないと師匠は指摘する。

「自分は右でも左でもどっちでも取れますし、どっちが得意とかないんですよね」と照ノ富士は言うが、これは相撲界の定説で"なまくら四つ"と揶揄(やゆ)され、いわゆる器用貧乏で大成しないと言われる。絶対の右四つ左上手の型を完成させない限り綱への道は険しいと師匠は案じているのだ。


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