【レスリング】吉田沙保里の夏合宿「着いた瞬間から帰りたい」 (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●構成 text by Miyazaki Toshiya  喜 安●撮影 photo by Kiyasu

photo by Kiyasuphoto by Kiyasu――かなりキツいメニューですね。

吉田 合宿の最終日は9キロコースを走って、そして解散となるんです。それが今も変わらない合宿メニューなんですが、それがもう嫌で嫌で......(笑)。高校生のころはまったくついていけませんでした。9キロコースを走るときは、当時女子の強化委員長だった鈴木光さんと、みんなより15分ぐらい前に出発するんです。現役時代に重量級の代表選手だった鈴木さんは身体が大きいので、走るのが遅いのでちょうどいいんですよ。すると、すぐに後ろから遅れて出発した集団が迫ってくるんです。山の中で、「イチ、ニ、サン、シー!」って掛け声が聞こえてくると、それがなんだかとっても怖くて......。そして、あっという間に追い抜かれちゃいました(笑)。

 おかげさまで、大学生のころには普通に走れるようになりましたけど、ランニングは嫌いでしたね。毎晩、「明日は雨が降りますように」とお祈りしていました。雨が降ると、さすがに外を走ることはなく、室内でトレーニングなんですけど、そのほうがよっぽどマシ。

――夏合宿でのマット練習はどんな感じでしたか?

吉田 練習は2部制で、マットでの技術練習や打ち込みは午後からでした。スパーリングでは次々に相手を替えてやるんですけど、高校生のころはそれも大変でしたね。当時は51キロ級でしたが、ロンドン・オリンピックで金メダルを獲得した(小原/旧姓:坂本)日登美先輩や、世界選手権で4回優勝している(山本)聖子ちゃん、同じく世界チャンピオンになった篠村敦子さん......、そんなすごい人たちが階級の近いところにいて、私はまだ技術もパワーもなかったから、結構いいようにやられていました。また、ひとつひとつの当たりが痛くて、練習が終わるともうボロボロ(笑)。

3 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る