【レスリング】吉田沙保里の夏合宿「着いた瞬間から帰りたい」 (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●構成 text by Miyazaki Toshiya  喜 安●撮影 photo by Kiyasu

 そのうち周囲にお店はなくなるし、家もまばらになって、見えるのは山と田んぼと畑だけ。ようやくクルマが止まって、「ここだよ」と言われたときには、愕然としました。日本レスリング協会の福田富昭会長が1991年に廃校になった分校を改築した合宿所は、失礼ですけど、野中の一軒家でしたからね。一番近いコンビニまでクルマで30分。臭いカメムシが寝床に入ってくるし、夜は蛙の鳴き声がうるさくて眠れないし......(笑)。また、当時は携帯電話なんてまったく使えないし、クーラーもありませんでした。そんなところで、1週間から10日間......まさにレスリング漬けです。

――合宿で一番つらかったのは?

吉田 朝練のランニングです。6時半ごろに起こされて、7時半から9時まで1時間半、とにかく走らされました。平らな道なんてまったくないですから、アップ・ダウンの連続で......。

――運動神経抜群で、スポーツなら何をやらせても上手なのでは?

吉田 いや、走るのだけは苦手でした。短距離はいいんですけど、長距離は全然ダメ。高校時代は自宅から通っていたので、朝も走ったりしていませんでしたから。それが合宿では毎朝3キロ、5キロ走らされて、その後に合宿所前の急坂をダッシュ、そして手押しグルマ。最後は仲間をひとり、さらにはふたりをおんぶしたり、抱っこして駆け上がったりして......。

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