ソチ五輪後の髙梨沙羅。大学生になってさらに成長中 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 築田純●撮影 photo by Tsukida Jun

 拠点を東京へ移したことについて、父・寛也さんは「(日体大は)トレーニングに関して他の大学には真似できない施設があるし、専門の教授もいるので、そういう人たちの話を参考にしながらトレーニングできる。本人にとってよかったと思う」とプラス面の多さを指摘する。

 また、練習環境の悪化が懸念されたが、その点も問題はないという。「夏場はかえって北海道よりいいくらいです。長野へも2時間ほどで行けるし、小さいジャンプ台が石打や妙高にある。秋田へ行くのも新幹線で2時間半ですから。それに夏は1カ月単位でスロベニアやオーストリアへ行くから、これまでとほとんど変わりません」(寛也さん)

 そうしたソチ五輪後の環境の変化が、髙梨にいい影響を与えているようだ。

「五輪に出させてもらってすごくいい経験ができたし、自分のベストを尽くしきれなかったという悔しい気持ちが残りました。ソチでの経験を、どう表現できるかが今シーズンの重要な課題だと思います。今回の札幌W杯は、悪天候で風待ちがあったりして、長い時間がかかった試合でしたけど、集中力を保っていられたのは大きな収穫だったと思います」

 また、「これまでは、失敗した気持ちを引きずってしまっていいジャンプができない試合があったけれど、今は何が起きてもいい方に解釈しようと意識するようになっている」と話すとおり、メンタル面も成長している。

 髙梨は昨年夏から瞬発系のトレーニングに取り組んでおり、踏み切り動作のスピードアップにつながっている。11日の2本目のジャンプ後、「空中を進んでいるスピードが、(1本目より)すごく速いと感じました」と言ったように、その成果は着実に表れてきているようだ。

 さらに、昨年の夏場のヨーロッパ合宿で、助走路の曲線が大きいジャンプ台で積極的に飛んできた。苦手意識を持っているこのジャンプ台を、ソチ五輪で攻略しきれなかったからだ。どんなジャンプ台にも対応できるジャンパーになりたい――。そんな意識が彼女のなかで高まっている。

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