【新体操】山﨑浩子が語る「フェアリージャパンの育て方」 (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji

 山﨑氏は、年に3度ほど行なっている講習会で基本の大切さを伝えたり、ジュニア選手を強化選手に指定することによって、選手たちの質も徐々に上がってきたという。実際、最近もトライアウトを実施して候補生4人を選出してみると、現メンバーより上手な選手がいたとのこと。「この10年ほど強化を継続したことで、各所属クラブの2~3番手ではなく、トップの選手がトライアウトを受けてくれるようになった」と、山﨑氏は感じている。

 一方、個人総合の強化はどうなのか。山﨑氏は、2012年からジュニアのトップ選手だった皆川夏穂、早川さくらのふたりを強化選手に指定し、個々の強化にも取り組み始めている。「皆川と早川のふたりが団体のメンバーに入るということはありません。彼女らは個人でリオデジャネイロ、東京と2大会連続でオリンピックを狙えるターゲット選手という位置づけです」

 山﨑氏が強化本部長に就任してから、今年でちょうど10年。コーチとしてではなく、新体操全体の責任者として、10年間、どんな思いで強化方針を貫いてきたのか――。

「一気に変えることはできず、ちょっとずつしか変えられなかったですね。とにかく、『世界しか見ていません』という立ち位置だけは曲げないようにやってきました。いつも、『これで本当にいいのかな?』と自問自答しつつ、実際にやってみて、『いいみたいだった』の繰り返し……。上位国になるためには、まだ足りないものはありますが、最近成果が出てきて、ようやく、『この方向でいいんだろうな』と思えるようになりましたね」

 試行錯誤しながらも、着実に育成と強化の歩みを進めてきたフェアリージャパン。最後に、今後の新体操に期待することを聞いてみた。

「春先のワールドカップ(※)では、何度か表彰台にも乗りました。世界は、それほど遠くないと思います。しかし、今の日本の実力では、他の強豪国が失敗したときにしか表彰台に上れない。多少失敗しても、メダルを獲ることができるくらいの実力をつけなければなりません。ただ、リオデジャネイロ五輪は東京五輪への通過点とは考えていません。2年後のリオ五輪でも、もちろんメダルを目指します。フェアリージャパンは、結果を出しながら、自ら道を作ってきました。毎回、全力を尽くすという気持ちでやっていきたい」

※新体操ワールドカップ=毎年春から秋にかけて、ポルトガル、イタリア、フランス、ロシアなど世界各国で開催されている。

 山﨑氏の熱い思いとともに、少しずつ成長してきた「妖精たち」。世界で華やかに舞う日は、もう近くまで来ている。


【profile】

山﨑浩子(やまざき・ひろこ)
1960年1月3日生まれ、鹿児島県出身。鹿児島純心女子高で新体操を始め、1979年から1983年まで全日本選手権5連覇。新体操ブームの火付け役となる。1984年のロサンゼルス五輪で個人総合8位に入賞して現役を引退。その後、後進の指導にあたるかたわら、スポーツライターとしても活躍。現在は新体操・強化本部長として日本代表を支えている。

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