【セーリング】若きセーラー土居愛実。リオにつながる銀 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 今大会のラジアル級のエントリーは8艇。ちなみに今大会の直前に開催されていたサンタンデールISAFワールドでの同級のエントリー数は120艇。かなり小規模のフリートであることがわかる。全く異なる戦い方が必要になるのだ。
※4年に一度行なわれるの世界選手権。

 少数艇でのレースといえば、オリンピックを含め、世界大会などで上位10艇のみが進むことができるメダルレースというものがある。そこに残るだけでも至難の業だが、進むことが許されたものにだけトライできる少人数レースは特別だ。張は世界大会のメダルレースの経験と、好みの風に後押しされ、トップの座を守り抜いた。これが土居の言う“経験”の差ということなのかもしれない。

 土居は中学3年まで少し小さいオプティミストという艇に乗っていた。その後レーザーラジアル級に転向することになるのだが、体重が軽かったため、艇はなかなか走らなかった。ヨット自体を辞めることも考えた。そんなときコーチから勧められたのが増量だった。徐々にスピードも上がりだした頃に臨んだのが高校2年のときのユースのラジアル大会。ここで土居は2位に入る。

「もっとうまくなりたいって思いました。この大会での手応えがあったから、オリンピックを目指そうって気持ちになった」

 彼女がオリンピックにセーリング競技があることを知ったのはこの頃だ。世界選手権で2位に入ったことで意識し始めたという。しかし、初めてのオリンピックは悔しさしか残らなかった。

「一番悔しかったのはメダルレースを観戦席から見たこと。ここで一番になりたいって思いました」

 そのために今、どんなレースにも対応する“経験”を全力で積み上げている。まずは来年、サンタンデールISAFワールドで獲得できなかったリオの出場枠をかけて、第2次クリオファイ(予選会)の世界選手権で結果を出し、夢の扉を開く鍵を手に入れる。

 伸び盛りのセーラー・土居愛実。リオの海で花開くことを期待したい。

【プロフィール】土居愛実(どい まなみ)
1993年8月29日、神奈川県生まれ。慶応義塾大学所属。2013年に世界選手権のプレ大会として行なわれた「ISAFセーリングワールドテストイベント・サンタンデールトロフィー」では、金メダルを獲得。23艇と少数ながらもランキング上位選手が出場する中で優勝を果たしている。

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