【トライアスロン】リレーの魅力伝えた日本、初代王者に (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 長田洋平/アフロスポーツ●写真 photo by Nagata Yohei/AFLOSPORTS

 その佐藤から"タスキ"を受けた田山は、「つなぎの役割」を担った。15秒あった差を韓国の24歳、ホ・ミンホに縮められ、最後のランはデットヒートに。タッチの差で1位をキープし第3走者の上田につないだ。8年ぶりに出場したアジア大会で初の金メダル獲得となった田山は興奮冷めやらぬ表情で喜びを語る。

「めっちゃ、嬉しい。自分の役割は1秒でもいいので先につなぐことだった。リレーのチーム戦は、個人戦ではライバルの選手が良き仲間になるところが魅力。今年の世界選手権では8位だったが、もしこの種目がオリンピックに正式に採用されたら日本にもメダルのチャンスはある」

 個人でも金メダルを獲得している上田は勝負の要となった。スイムでは韓国の若手で16歳のキム・ギュリと並んで泳ぎ、バイクでは駆け引きの場面をわざと作って相手の足を使わせ、追走する形に。そして上田が得意とするラン勝負に持ち込み、700メートル付近で一気に引き離し、30秒差をつけてアンカーの細田雄一につないだ。

「4人それぞれの個々の特性を生かしたレースができ、しっかり役割を果たした結果が出せた。チームスタッフがコースの各ポイントでタイム差を教えてくれて後続の様子が分かったので思い通りのレースができた。勝因はチームワークです」

 こう上田がレースを振り返ったように、混合リレーでの日本チームはどのチームよりも戦術に長(た)けていた。飯島監督を含めた6人のチームスタッフがコース内外の要所ポイントでトランシーバーを使いながら、後続の相手とのタイム差を選手に知らせ、レース展開やどのような駆け引きをすればいいかを指示していたという。日本は、個人スポーツとしてのトライアスロンがチームスポーツになることで、新たな楽しみ方を見せることにも成功していたと言っていいだろう。

 上田も「距離の長い個人戦と違って、混合リレーは接戦になるので観客も興奮して観てもらえたと思います。短い距離なのでトライアスロンというスポーツを知ってもらえるきっかけにできる種目です。鉄人レースというイメージがあるが、これからはこの種目で若い人たちにもトライアスロンの楽しさをどんどん広めていければいいですね」と混合リレーの面白さをアピールした。

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