さようなら、そしてありがとう。2013年に引退したアスリートたち (2ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi photo by AFLO

 例えば、バレーボール全日本女子の名セッターとして銅メダル獲得に貢献した竹下佳江(35歳)と、日本女子競泳界を長年に渡って牽引してきた寺川綾(29歳)だ。竹下はロンドン五輪後、「自分と向き合うための時間が必要」と休養宣言し、その後、今年7月に引退を表明。一方の寺川は、今年7月の世界選手権で銅メダルを獲得し、日本新記録を更新するなど現役続行かと思えたが、「故障も多く、100パーセントのパフォーマンスができず、選手として自分を許すことができなかった」と引退を決意した。

 競馬界で今年現役を退いたのは、騎手として通算4464勝を挙げ、『アンカツ』の愛称で親しまれた安藤勝己(53歳)だ。2012年の11月に開催された京阪杯を最後に休養していたが、今年1月に引退を表明。その理由については、さきの京阪杯での騎乗において、「(馬を)動かしきれんで、納得いかなかった」と述べている。

 一方、選手の中には時期を決め、未練なく去っていく者もいる。元ラグビー日本代表で、ニュージーランドや南アフリカ、ヨーロッパなど、海外7つのプロチームで活躍した四宮洋平(35歳)だ。かねてから四宮は、「現役生活は35歳まで」と決めており、リミットとなる今年、現役ラガーマンとしての生活に予定どおり終止符を打った。

 しかし、予定外のアクシデントによって、競技生活から去る決断を強いられる者もいる。ケガや病気で、現役アスリートとして生き続けることが困難になったケースだ。

 かつて横綱候補最右翼と言われていた把瑠都は、28歳という若さで相撲界を去った。原因は夏場所(5月)で負った左ひざの故障であり、角界のディカプリオと呼ばれたハンサム力士は会見で、「悲しいけどケガが治らず、土俵に立つことができません」と悲痛な表情を見せた。

 同じく、大相撲で人気を博した高見盛(37歳)も引退に追い込まれた。小結にまで昇進するも、右肩の故障によって調子を落とし、ついに今年の初場所(1月)で幕下陥落が決定的となって引退を表明。「自分の身体がボロボロになっている」と語り、最後は土俵に上がることを断念せざるを得なかった。

 さらにはもっと長く、苦しい戦いを続けたのち、今年になって現役生活にピリオドを打ったアスリートもいる。2003年に沢村賞と日本一を勝ち取り、無類の強さを誇った斉藤和巳(36歳/ソフトバンク)は、6年にも及ぶ長く苦しいリハビリの果て、マウンドでの雄姿を再び見せることなく引退を決めた。球団は功労者として来季以降も現役としてのサポートを約束してくれたが、7月31日の支配下登録期限に間に合わないことを悟り決断。「このままズルズル続けたら、今までの自分を否定してしまう。そのほうが後悔する」と、新たなスタートを切る覚悟をした。

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