為末大も提言。「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」の意義と未来 (3ページ目)

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko

 シンポジウムの中でも、暴力を監視する第三者機関の設置の重要性が再三語られていた。全柔連が現在の問題解決に向けて第三者委員会を設けたのは客観的な検証という意味からもちろん好ましいことだ。

 しかし、これが恒常化されるということは、もはやNF(国内競技団体)には自浄作用が期待できないということの表れではないだろうか。NF自身がこれを恥と思う文化が形成されなければ議論は本質からズレる。

 いかなる不祥事を起こしても自己反省をしないトップを見れば、末端の現場が暴力を改めないのは自明であろう。最も大きな暴力は、競技団体の中にこそ存在する。火が出たから鎮火するのではなく、必要なのは火元を締めることである。

 かつて、自分の意志で大学に進学を希望した有望選手に「そんなことならお前はもう二度と日本代表に呼ばれないぞ」と、実際に招集を拒否した団体があった。明らかにドーピングではないのに、「いやあ、マスコミが騒いじゃったからさ」と、クロにしたことをしゃあしゃあと言った医事組織の長がいた。オリンピック選考会の日本選手権に出場したら「他団体の大会に出場したからお前はクビだ」と破門にした指導者がいた。

 トップが代わったこれらの団体が今、当時のことをどう総括しているのかは不明であるが、泣いてきたのは選手である。暴力とは現場における体罰だけではない。これらも紛れもない暴力である。

 友添秀則教授に質問をぶつけると「スポーツにおける暴力の定義としてそれらも認識しています。競技団体のパワハラについては宣言の中にある『団体及び組織』の項目で網羅していると考えています」との回答が返って来た。

 宣言後の動きを見守っていきたい。

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