【体操】内村航平「神様がボクに試練を与えてくれた」 (4ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 しかし内村は、同じ過ちを2度は繰り返さなかった。あん馬を無事に乗り切ると、徐々に本来の姿を取り戻していった。一度、流れに乗ると、あとはいつもの内村ペース。最後のゆかを終えると、内村の名前は指定席のトップに君臨していた。

「あの優勝でやっと、内村航平を証明できた気がする」

 種目別ゆかでは、ロンドンヘ来て初めて納得できる演技ができたという。2位に終わったものの、「美しい体操を目指しているので、そういう評価は銀メダル以上に価値がある」と素直に喜んだ。

 ロンドン五輪を金1個、銀2個で終えた内村は、笑顔で次なる目標を語った。

「日本の伝統でもある美しく完璧な体操で勝負したい。今回はそれを十分に見せられなかったから。4年後のリオまでには、それを実現したい」

 視線の先はもう、次の勝負の場へと向けられている。

「ロンドンでは、神様がボクに試練を与えてくれたのだと思う」

 五輪の魔物を悪魔と見るか、神様と見るか……。内村航平は後者と信じ、早くも一歩、前に踏み出している。

『Sportiva ロンドン五輪・速報&総集編』(2012年8月17日発売)より転載

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