2012.12.28

【体操】内村航平「神様がボクに試練を与えてくれた」

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

ロンドン五輪では金メダル1個、銀メダル2個を獲得した内村航平プレイバック ロンドン五輪/男子体操

「世界選手権・個人総合3連覇」という自信と、ずっと逃し続けていた「団体・金メダル」という思いを胸に、ロンドンに乗り込んだ内村航平。しかし、「自分のやっている体操がいつもと違う」と、わずかな『ずれ』を感じたのは、予選最初の種目、鉄棒を終えたときだった。

 試合前の練習では「絶好調」と確信できるほど状態が良かった。内村も「これならいい感じで試合ができそうだ」と、自信を持って会場入りした。だが、鉄棒の終盤、離れ技のコールマンで、まさかの落下……。

「落ちた光景は覚えているけれど、車輪のタイミングも合っていたし、離れたときの感じも『これなら全然(鉄棒を)持てる』と思っていたのに……」

 なぜ、落下するようなミスを犯したのか。内村は原因を探したが、その答えは見つからなかった。そんな気持ちを引きずったまま、次の種目へ。その結果、内村は3種目目のあん馬でも落下するというミスを犯してしまう。

 大黒柱のまさかの不調は、ほかの選手に予想以上の動揺を与えた。その不安の波は、抑えるにはあまりにも大きく、ほかのメンバーも内村の不調をカバーするどころか、次々とミスを連発した。

「いつもとは何かが違っていて、『ハマった』というような演技はひとつもなかった。苦しい中でぎりぎり体を動かしている、という感じで……。頭の中で『もっとできるだろう!』と、ずっとイライラしながら演技をしていました」(内村)

 大会前には、「団体は予選1位通過のイメージしかない」と話していた。団体優勝のためには、それが絶対条件だと……。だが、結果は5位。団体戦と兼ねていた個人総合予選も、9位(89.674点)という低順位に。さらに複数のメダルを狙っていた種目別でも、決勝に出られるのはゆかだけ。まさに『誤算だらけ』のスタートとなった。

 その悪い流れは、団体決勝でも立て直すことができなかった。最初のつり輪こそ無難にまとめたものの、次の跳馬でチームは再びアクシデントに襲われる。山室光史が回転前の着手でミスをし、四つんばいで着地。そのうえ、左足を痛めて競技を続行できなくなってしまったのだ。

 その不運を尻目に、トップ争いから一歩抜け出したのは、ライバルの中国。日本が逆転できる可能性は限りなく遠のき、あとは「2位を守る」という悔いの残る戦いを強いられることになった。