【体操】断ち切れなかった「負の連鎖」。内村航平が「敗因」を語る (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 一方、そんな中で目立ったのは、中国の『したたかさ』だった。予選6位という不安定なスタートながら、「ここぞ!」となると、大きなミスをしない強さを見せつけた。たとえば鉄棒では、ひねり技で手の甲をバーに当ててから手首を返してバーを握らなくてはならないチャン・チェンロンが、手首とひじの中間あたりをバーに当ててバランスを大きく崩すという場面があった。だがそれでも、チャン・チェンロンは冷静に手の位置をずらしてバーを握り、中過失に止めたのだ。その執念にも似た『したたかさ』が、北京五輪以降、若いメンバーに変わったにもかかわらず、王者であり続ける中国の強さなのだろう。

 それに対して日本はまだ、予想外にピリッとしなかった内村に影響されたのか、勢いに乗れず、ライバル中国を動揺させることもできなかった。収穫らしい収穫といえば、チーム最年少の加藤が3種目で力を出し切ったことと、昨年の世界選手権で大失敗した田中佑典が大きなミスもなく終え、次へのキッカケをつかんだことだ。

「表彰台に上がっているときは、メダルが獲れたということより、『本当に5人で楽しく試合ができたな』と振り返っていました。5人で楽しくできたことは、幸せだと思うべきじゃないかなと考えていたんです」

 表彰式後の内村は、穏やかな表情で話した。

 彼にとってこの五輪の最大の目標は、団体の金メダルだった。それを果たすことができず、戦いは終わった――。

 きっとその穏やかな表情は、結果を素直に受け入れ、そこで思いを断ち切り、次の戦いである個人戦に向けて気持ちを切り換えようとする、決意の表れだったのだろう。

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