2012.04.17

【月刊・白鵬】横綱も絶賛する、新大関・鶴竜の「武器」とは?

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

毎年恒例となる靖国神社の奉納大相撲が今年は4月6日に開催され、協会役員と横綱をはじめとした幕内力士が中庭参拝を行なった。第13回:鶴竜

大盛況だった”大阪場所”で
22回目の優勝を飾った横綱。
その激闘を振り返りつつ、
新大関・鶴竜の強さを語る。

 2年ぶりに開催された春場所(3月場所)は、初場所(1月場所)で初優勝を飾った大関・把瑠都の綱獲りに加え、関脇・鶴竜の大関昇進という話題もあって、初日からたくさんのファンが会場に駆けつけてくれました。おかげで、私たち力士の気合いも高まって、大いに盛り上がったと思います。

 10日目までは、注目の把瑠都と鶴竜、そして平幕の翔天狼に、私の4人が1敗で並ぶ激戦でした。しかし11日目に、把瑠都と翔天狼が黒星を喫し、把瑠都は12日目も敗れて3敗目。綱獲りは、絶望的になりました。

 一方、鶴竜は快調でした。13日目、私が稀勢の里に敗れると、ついに単独トップに浮上。乗りに乗る鶴竜は、そのまま14日目も勝利。大関昇進を確実にする13勝目を飾って、初優勝の可能性も高まりました。

 場所の流れは、完全に鶴竜。1差で追う私にとっては、非常に厳しい状況でした。でも、私もこの場所にかける思いは相当なものがありました。把瑠都、鶴竜の陰に隠れて、何となく蚊帳(かや)の外といった感じでしたが、初場所で優勝を逃していただけに、是が非でも春場所は制して、横綱としての存在感を示したいと思っていたからです。

 ゆえに、自力優勝はないとはいえ、逆転優勝する気持ちだけは失わないようにしていました。勝負の世界は何が起こるかわかりません。最後まで「自分を信じて全力で戦おう」「横綱の底力を見せつけよう」という心構えでいました。

 そんな執念が通じたのか、迎えた千秋楽。鶴竜が、勝てば優勝という本割でまさかの黒星を喫したのです。地元・大阪の大声援を受けた豪栄道が、出足で鶴竜を圧倒。番狂わせを演じました。

 思いがけない展開に、会場の熱気は高まるばかり。私の士気も上がる一方です。横綱として、この転がり込んできたチャンスを逃すわけにはいきません。最後の一番で把瑠都を下して、鶴竜との優勝決定戦へと駒を進めました。