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本田真凜、アイスダンサーとしての第一歩 ふたりで分かち合う「人生ではなかなか巡り会えない瞬間」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya
  • 能登 直●撮影 photo by Sunao Noto(a presto)

 冷静な分析だった。焦る必要はない。何から何まで初めてのこと。アイスダンスはシングルとは完全な別種目なのだ。

 もっとも、氷上では気迫も見せた。フリーでは、冒頭のローテーショナルリフトだけでなく、ストレートラインリフトも見事に成功。デビュー戦ながら、リフトはふたつともレベル4を勝ち取っているのだ。

「時間をかけてやってきたリフトは、ふたつともレベル4だったんです! それは練習が報われたところかなって思います。『身長差があって、リフトは難しいんじゃないか?』と言われているのは知っていたので、"すごいでしょ?"っていう気持ちで上にいました(笑)。リフトは10種類を試し、そこから組み合わせてやっているんですが、これから伸びしろもありますし、次の試合までさらにステップアップしたいですね」

 リフトはいきなりできるような技ではない。練習でひとつずつ、積み上げてきた。少しでもふたりの息がずれたら、大けがにつながる恐れもある。それは初舞台で、ふたりで生み出した傑作と言える。 

〈ふたりが一緒に滑る〉

 アイスダンスの基本と、ふたりはとことん向き合っているのだ。

「ふたりで分かち合えるっていうのは心強いし、それで同じことを目指す瞬間は、人生ではなかなか巡り会えないと思っています」

 本田は口角を上げて言い、こう続けた。

「(誰かと)一緒に試合に出るのは初めてになるので、ひとりと違って心強さを感じましたね。自分に対しても自信を持って演技できました。たとえ大きなミスがあったとしても、"ゴールまでの長い道のりの間の小さなこと"と捉えられたと思います。もちろん全力でやるんですけど、そういう気持ちになれるくらい、練習を積み重ねてきたかなって。ふたりで同じ熱量で、同じゴールを目指し、日々頑張れる......もちろん楽しいことばかりじゃなく、ケガとも隣り合わせなんですけど、その過程すべてが美しく、大切な日々で"尊いな"って思いますね」

 彼女はそう言って、アイスダンサーになった実感を確かめていた。

「オリンピックに向けた4年の長い道のりで言えば、(デビュー戦は)小さな一歩でした。でも、いつか振り返ったら、"すごく大切な大会になった"と思うはずです。たとえばデビュー戦前の心境や、デビュー戦だからこそ感じた(演技後の)挨拶のときの景色とか......。これから良いことだけじゃなく、いろんなことがあると思います。でも強い覚悟で、みなさんに"面白いな! こんなに上達したんだ!"と思っていただけるように、もっと進化した姿を見せたいと思います」

 本田は弾むような声で言った。デビュー戦で、新たな風を吹かせたことは間違いない。彼らがその舞台に立つ決断をしたからこそ、会場は満員になって、メディアが大挙して訪れ、アイスダンス界全体を華やかに彩ったのだ。

 今年12月に行なわれる全日本選手権に向け、しょまりんがどんな変身を遂げるのか。予定されているイタリア遠征では、本田や宇野と同じ身長差だという世界的アイスダンサー、シャルレーヌ・ギニャール、マルコ・ファッブリ組に師事するという。物語の続きが楽しみだ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

東日本選手権大会・アイスダンス予選会 フォトギャラリー

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