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「今回は泣かないで滑りたい...」 村主章枝はトリノ五輪で涙をこらえた (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【エキシビションで"村主ワールド"全開】

「現状としては出しきったと思いますが、結果的に見れば詰めが甘かった。新しいジャッジシステムに慣れるのに難しいところはありますが、私自身はスケートから離れることはできない。先生と相談しながらの一年一年になると思いますが、次のバンクーバー五輪まではいきたいと思っています」

 トリノ五輪のフリー演技後にこう話した村主は、エキシビションでは試合以上の存在感を見せた。プログラムはシルク・ドゥ・ソレイユ『キダム』より『セイソーゾ』。持参した赤いボールとともに踊る演技だった。

 透き通った歌声の始まりとともに真っ赤な照明に照らされ、しっとりとした滑りで"村主ワールド"をつくり出す。ボールを使った観客とのやりとりもあった。そして、曲調がアップテンポになる後半はいきいきとリンクを滑り回り、最後は高速のアップライトスピンで締める演技は観客の心を惹きつけた。彼女にしか生み出すことができないような独自の表現世界は、強烈な印象を残すものだった。

「前回の(ソルトレイクシティ)五輪は自分の力を出しきれた順位でよかったですが、今回は力を出しきって大きなミスがなくても点数が出なかった。それを受け止めるのは少し大変なところもあります」

 エキシビション後にこう話していた村主だが、その1カ月後の世界選手権で2位になり、次へ次へと向かう気持ちの強さを感じさせた。

終わり

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<プロフィール>
村主章枝 すぐり・ふみえ/1980年、千葉県生まれ。幼少期をアメリカ・アラスカ州で過ごし、ウインタースポーツに親しむ。帰国後、6歳でフィギュアスケートを始める。1997年、16歳の時に全日本選手権で初優勝。以降、同大会で5回優勝。2002年ソルトレイクシティ五輪、2006年トリノ五輪で2大会連続入賞。日本人初となるGPファイナル優勝、四大陸選手権優勝3回など世界トップスケーターとして活躍。2014年、28年間の競技者生活を引退。2019年に拠点をアメリカに移し、コーチや映画プロデューサーとして活動する。

著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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