宇野昌磨が見出した「飛躍的成長」の条件 「やりたいからやっているだけ」の気持ちで新アイスショーへ (3ページ目)
【自己分析で見出した"飛躍的に成長できる条件"】
ーー個人的に宇野さんに強く惹かれたのは、2018年の全日本選手権のショートプログラム『天国の階段』ですでにケガを負っていたのにリタイアせず、フリー『月光』を滑りきって、"運命に負けない"という強い気概を見た時です。当時、「これが僕の生き方」と話していましたが、まさに今回の『Ice Brave』の勇敢さに通じるのではないでしょうか?
当時はケガをして、歩くのもしんどいくらいだったので、棄権も考えられたと思います。でも自分のなかに棄権という選択肢がなかったんですよ(苦笑)。自分のスケートへの熱量はすごくて、フィギュアスケートがなかったら、自分のなかには何も残らないっていう感じだったので......。最近になって、フィギュアスケートに自分が自信を持っている部分をようやく気づいて。それは、スケートへの向き合い方。たとえば、ジャンプも表現も、自分はトップレベルだったと思いますけど、一番ではなかった。それぞれのジャンルでトップの人はいるのに、なぜ自分が世界でトップに立てたのか。こうした活動ができるのか。それは、スケートへの熱量が人よりもすごかったんだと思います。
ーーありあまる熱量で、宇野さんの演技は引力がありました。鬼気迫るものがあるのに、楽しそうにも映るというか......。
年月も経って、自分で考えるようになって。練習内容とかもいろいろと試すようになり、どんな時に成長できたかって考えました。それは、目標とやるべきことがマッチしている、両方が重なった時だったんですよ。ふたつが合わさると、飛躍的に成長できました。それが"やりたいこと"だからですよね。"やるべき"だったら努力になっちゃうんですけど、"やりたい"って感情が入ると、それは努力じゃなくなって、"やりたいからやっているだけ"ってなる。今はそういう気持ちで『Ice Brave』に向き合えています。
【プロフィール】
宇野昌磨 うの・しょうま
プロフィギュアスケーター。1997年12月17日、愛知県生まれ。現役時代には、全日本選手権優勝6度、世界選手権連覇、2018年平昌五輪銀メダル、2022年北京五輪銅メダルなど華々しい成績を残す。2024年に現役引退し、現在はアイスショー出演などプロスケーターとして活躍している。2025年6月〜7月に自身が初めて企画プロデュースしたアイスショー『Ice Brave』を名古屋、新潟、福岡の3都市で開催予定。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
フォトギャラリーを見る
3 / 3