宇野昌磨、つくりたての新SPを披露。「曲調は強い、弱いが明確にわかれていて、そこはしっかり表現したい」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

神奈川・KOSE新横浜スケートセンターで行なわれた神奈川・KOSE新横浜スケートセンターで行なわれたこの記事に関連する写真を見る この日、宇野はショートプログラム(SP)の新プログラム『Gravity』を初披露している。

 リンクに現れた宇野は、黒のスーツ上下に白いワイシャツだった。胸をはだけさせ、ネックレスを揺らし、軽やかに滑る。冒頭で4回転トーループをきれいに着氷。ジョン・メイヤーのギターの律動に身をゆだねるようにステップを踏み、スピンを回って、十八番の「クリムキンイーグル」で観客を沸かせた。サービス精神が旺盛だった。ラストのポーズでは、両手を大きく広げて、視線を空に向けた。

「つい先日まで参加していたスイス合宿で、ランビエルにつくっていただきました」

 宇野は新プログラムについてそう明かしている。

「まだつくりたてで。テーマについては、まだランビエルに深く聞いていないので、これからですが曲調自体は、強い、弱いが音楽として明確にわかれているので。そこはしっかりと表現することができたらいいなと思っています」

 彼はプログラムに打ち込むことに喜びを感じるタイプだろう。練習で研鑽を積み、試合の中で課題を見つけ、それを再び練習で改善させ、完成に近づける。その繰り返しを楽しめる。

「練習どおりのショートプログラムができました。練習での力を試合で発揮するのは難しいので、今はうれしく思います」

飄々とリンクに立つ世界王者

 これは3月の世界選手権での言葉だが、宇野の本質はリンクに立つ日々にある。どれだけ大舞台であっても、試合の結果だけに左右されない。そこに、新世界王者の深淵が見える。

「僕は負けず嫌いではあるんですけど、自分のためだけにスケートをするのが得意じゃなくて。でも近しい人のためなら、どういう演技で満足してくれるのかわかっているので、リラックスしてできるのかなと思います」

 そのあり方も一種、独特かもしれない。しかし、真剣に自らと向き合って出した答えなのだろう。言うまでもないが、世界王者になってもおごりたかぶりなどいっさいない。彼はそもそも、そうしたナルシズムを恥じるタイプだ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る