本田武史が五輪シーズンの女子フィギュア界を分析。ロシア勢は「誰が思いついたんだ、というレベルのことを始めている」 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by AP/AFLO

 ワリエワはフリーで180.89点の世界最高得点を叩き出しましたが、これだけ高得点を出されてしまうと、日本の選手がショートプログラム(SP)で健闘してある程度の得点を出していても、"貯金"には到底なりません。

 平昌五輪では、アリーナ・ザギトワが当時のルールを最大限に生かして、基礎点の1.1倍になるプログラム後半に難易度の高い3回転+3回転の連続ジャンプを跳んで優勝しましたが、北京五輪では女子でも4回転を2種類、3種類と跳ぶ、そういう時代になりました。やはり4回転を跳ぶか跳べないかという技術の面での差が、結果にも出てくるのではないかと思います。

 特にロシア女子の若手は、これまでのオーソドックスな跳び方とは違って、両手や片手を挙げてジャンプを跳ぶスタイルが主流になっています。両手を挙げて4回転を跳ぶなどという、「誰が思いついたんだ」というレベルのことをやり始めています。彼女たちにとっては、小さい頃からそのスタイルで跳んできているので、それが当たり前だと思っているのかもしれません。いずれにせよ身体能力の高さを物語っています。

 一方、トゥルソワやワリエワに対抗できる実力を持っているのが、SP、フリーで計3本のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を完璧に跳びこなせるまでになったエリザベータ・トゥクタミシェワです。24歳になった今も第一線で活躍を続けていますから、ロシア女子の五輪代表争いは難しい戦いになると思います。そこで選ばれた3人はいずれもメダルの最有力候補でしょう。

 五輪本番で表彰台を独占しそうな勢いがあるロシア勢に、紀平梨花や坂本花織、樋口新葉、宮原知子ら日本選手たちがどれだけ食い込んでいけるか。非常に厳しい戦いとなるはずです。

 負傷によりスケートカナダを欠場した紀平梨花選手は、夏に見た時、コンディションが本調子ではないようでした。おそらく昨季後半から4回転やトリプルアクセルの大技ジャンプの練習に積極的に取り組んできた影響があるのかもしれません。ただ、4回転を跳ぶロシアの選手が増えたので、勝つためには跳ばざるを得ないというのも間違いない。ケガのリスクを考えると、難しいところだと思います。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る